時代の変化とともに接客方法も変わっていくものです。そんな当たり前のようなことではありますが、実際にどのように変化しているのかと聞かれると具体的に答えるのが難しいと思う人が多いはずです。実際に、10年前のアパレルショップや百貨店のユーザー層は変化し、ニーズも周辺環境も変化しているもの。

特に、スマートフォンが生まれた時から身近な存在だったZ世代にとっては、元来の雑誌や新聞は不要な存在で変わってSNSやインターネットがネイティブな「デジタルネイティブ」や「ソーシャルネイティブ」と言われている存在なのです。

Z世代とは、1990年代半ばから2010年頃生まれの若者を指す言葉です。独自の価値観を持っている年齢層といわれており、既存のマーケティングアプローチが通用しづらいと言われており、それは接客も同様と言われています。

 

まずはZ世代を知る

マーケティングについて考えるうえでは、世代から消費者層の特徴を分析することも大切です。現代においてもっとも若い消費者層にあたる「Z世代」は、消費に対する考え方、商品やサービスを選択する動機、情報収集のプロセスなどに独自のスタイルがあると言われています。

少子高齢化が続く日本においては、Z世代が人口に占める割合は約14%とされていますが、世界的に見れば人口のおよそ1/3を占める主要な消費者層でもあります。そのため、ビジネスの分野においては決して無視できない世代といえるでしょう。Z世代は将来的に消費の中心となっていく世代であるため、ビジネスの分野においても注目されています。Z世代は今後数十年、ライフステージを進めるごとに消費規模を広げていくため、マーケティングの優先度も必然的に高くなると予想されているのです。

Z世代は生活の大部分をスマートフォンなどのデジタルデバイスで完結させる傾向があるため、従来のマーケティングアプローチや接客が通用しないケースも少なくありません。既存の接客スタイルやマーケティング手法に依存している企業は、Z世代を中心とした消費者の価値観や生活様式の変化に伴って、大幅な転換が求められることになるでしょう。

SNSやその他のオンラインツールが身近にあるZ世代は、「個人の発信力が高い」傾向にあります。Z世代にサービスや商品が受け入れられると、個人の消費者が発信によって宣伝効果をもたらし、企業側としては思ってもみない形で認知が広がることも珍しくありません。Z世代にはZ世代なりの口コミ効果があるのです。

 

Z世代ならではの特徴

時代の影響なのか、人間の進歩の結果なのか、Z世代には独自の特徴があります。

 

①情報収集はWebが中心である

Z世代は基本的な情報リテラシーが高く、インターネットから入ってくる情報を細かく精査しながら、自在に扱うことができるといわれています。また、価値観の多様性も大事にしているため、多くの人を対象としたマスメディアよりも、SNSなどで情報収集をする傾向が強い点も特徴といえるでしょう。一方のSNSは、リアルタイムで多様な意見を参照できるうえ、情報収集のスピードや範囲も個人の状況に応じて調節可能なため、Z世代の価値観と高い親和性を持っているといえます。

 

②いかに効率的であるかどうか

スマートフォンやパソコンといったデジタルデバイスを活用する生活に慣れているため、日常生活においてもスピードと効率性を重視する傾向があります。紙文化やハンコ文化に代表されるアナログ体質には疑問を抱き、合理的でないルールを疑う人が多いため、企業においては業務の効率化に寄与する人材としても注目されています。そのため、消費行動や他人の行動にもいかに合理性を伴っているかを重要視します。

 

③個人の感性と価値観を尊重する

Z世代の価値観を示す重要なキーワードとして、「多様性」が挙げられます。性別や人種といった属性にとらわれず、他者の多様な価値観を尊重し、大切にするという考え方が当たり前になっているのです。また、他者の多様性を重んじるとともに、周りと同じではない「自分らしさ」を大事にする傾向も強いといえます。さらに、個人の価値観にもとづいたライフワークバランスを重視している点も特徴的です。仕事よりもプライベートを優先させるなど、自分自身の価値観にもとづいた考えを発信できることから、それまでの世代と比べると興味や関心の幅も広い傾向があります。

 

④承認欲求が強い傾向がある

Z世代は自分らしさを大切にする一方で、SNSやWeb上でのコミュニケーションが当たり前になっていることから、他者からの評価を気にする傾向もあるといわれています。また、周囲の評価を気にするあまり、保守的になってしまう一面も見られることもあるようです。自分の感性や個性を大事にしながらも、それを他者に認めてほしいという欲求も併せ持っています。

Z世代の消費行動

Z世代を上の世代と比較すると、「みんなと同じものを欲しがる」といった画一的な消費傾向はあまり見られないのが特徴です。前述のように多様な価値観が存在しているため、自分がどう感じるかを大事にしているのです。以前のファッショントレンドの一つにコラボ商品や芸能人着用製品が人気を博す傾向にありましたが、Z世代にとってはその傾向が薄いです。

また、特定の物質を対象とした「モノ消費」ではなく、習い事や旅行のように体験を重視した「コト消費」を大切にする傾向もあります。コト消費自体はY世代にも見られる傾向ですが、Z世代はさらに社会貢献や共感を意識した「イミ消費」に重きを置いているのです。

Z世代はハイブランドへのあこがれよりも、コストパフォーマンスや実用性を重視して商品やサービスを選ぶ傾向があります。ここにもいかに効率的かという点が重要になってくるのです。単に知名度が高いという点よりも、「自分にとってどのような価値があるのか」を重要視するのです。また、お金だけでなく、費やす時間に対してどのくらいの満足感が得られるのかについて、シビアに考える傾向もあると言われています。

さまざまな価値観に触れていることから、多様性への理解を求める部分が多く、商品やサービスについて自分なりの向き合い方を持っている点もZ世代の特徴です。他者が特定の商品を所有していたとしても、所有するほどまで価値を感じていなければ、レンタルやサブスクリプションサービスの利用に留まる傾向が見られます。とはいえ、倹約思考が強いというわけではなく、自分が価値を感じれば支出を惜しまないといった一面も併せ持っています。気に入った商品やサービスがあれば、リピーターになったり他者に共有したりと、消費行動に特有の柔軟性が見られる点は、Z世代の特徴といえるでしょう。また、これが時代の特徴とも言えるでしょう。

Z世代に向けた接客施策

Z世代は消費行動そのものに「意味」を求める傾向が強く見られます。商品の購入であれば、「利便性が高い」「安くてお得」という点だけでなく、どのようにして製品が生まれたのか、購入することで自分や社会にどのような影響をもたらすのか、などにも目を向けようとしているのです。そのため、接客時には商品開発の思いやストーリーを伝えるよう心がけましょう。そのストーリーやバックグラウンドヒストリーに共感してもらえたら接客としては成功と言えるでしょう。

 

Z世代は単に商品を購入するだけでなく、そこから生まれる体験価値を重視する傾向があります。たとえば、購入後に商品を使っている姿をSNSに投稿したり、気に入った商品を他人と共有したりすることも大きな価値のある体験となります。また、それが誰かの共感を生んだり、反応があることも重要となります。当たり前ですが、Z世代の購入ルートには、実店舗以外にもオンラインストアやSNSなどさまざまな選択肢があります。それだけに実店舗へ足を運ぶ際は、心地よい空間や良質な接客など、実店舗ならではの付加価値が重要となります。

 

Z世代の多くは個人で複数のSNSを利用しており、豊富な情報収集ルートから自分に合った商品やサービスをセレクトしているといわれています。ですので、SNSでの情報収集はもちろん、トレンドや流行を把握しておく必要があります。店舗でのSNSのアクティブ度などもチェックしていると言われるので気にしておくと良いでしょう。そして、SNSは一方的に発信するだけでなく、ユーザーの要望を募ったり、ユーザー同士が意見を交換し合ったりできる双方的なコミュニケーションの場でもあります。企業が積極的に運用していくことで、自然と消費者との距離が縮まり、Z世代に効果的に訴求できる可能性が高まるのです。

 

 

これから消費行動の中心となっていくZ世代。今までの常識が通用しないからといって、今までの常識を当てはめようとせず歩み寄り理解することが重要です。むしろ、その姿勢を示すことにも共感をしてくれるケースがあります。あまり型にハマりすぎず、彼ら彼女達の思考を理解し、寄り添う接客が重要と言えるでしょう。