2018年9月にクレセントアイズ初となる”リラックス”をキーワードにした自社運営ショップ「hilal ay(ヒララ)」を札幌に出店した。そして、初のルームウェア・パジャマなどのリラックスウェアを中心に展開する自社ブランド「hilal ay(ヒララ)」を店舗出店に合わせてスタートさせた。

コロナ禍の猛威はファッション業界に大きなダメージを与え続け、数年前であれば考えもしなかった大手アパレルメーカーの倒産や、人気ショップの閉店などが相次いでいる。今も止まることなくアパレル業界の大不況を招いている。

 

そんな中でも、hilal ayは店舗の多方面から出店依頼を頂きながら店舗数を増やしている。ファッション業界が不況に陥る中で店舗を増やし、順調とまで言わずとも堅調に事業を広げている。混沌とし、出口が無いとも思える暗闇を歩くファッションビジネス、ブランドビジネスについて現状をどう捉え、今後どのように変化していくのだろうか。クレセントアイズ社長の村田にインタビューを行った。

 

自分達の新たなビジネスのモデルを確立する

- なぜ販売代行や店舗運営代行を主戦場としていたにも関わらず自社ブランド・自社店舗を始めるという決断をされたんですか?

クレセントアイズに入社する前の会社では、私自身が販売代行や店舗運営代行を行う会社様に業務を依頼する側にいました。それが縁あってクレセントアイズに入社することになり、販売代行や店舗運営代行を行うことになったんですね。当然のことながら、仕事を依頼してくださっているブランドさんやメーカーさんの商品と用意された店舗で業務を行うわけなんですが、良くも悪くも自分達の仕事の良し悪しだけで店舗の業績を左右させることができないんですよね。

どこの業界においてもそうなんですが、結局、クライアント様次第で私たちの仕事の必要性の有無が変わってくるじゃないですか。景気が悪くなったり、効率の悪い店舗が出てくれば、当然のことながら閉店しますよね。そうすると、私たちの仕事は無くなってしまう。

 

- つまり、自分達でコントロールのできない範囲が大きいと。

そうですね。そう思うようになって、ふと考えてみた時に、今まで長きに渡り培ってきたノウハウと現場の数は沢山あるし、経験となって積み重なっているんじゃないかなと思ったわけです。それならその経験を自らがハンドリングするビジネスにいかせるのでないかと思いブランドビジネスをスタートさせたところもありました。

 

確かに平成の時代では、日本におけるファッション産業も盛んで百貨店や繁華街の路面店などで商売することは今に比べれば障壁は低かったように感じます。確かに当時の売上というのは、今とは比べ物にならないものがありました。しかし、コロナ禍も相まって、そもそも”物”が売れない時代になりました。更にはインターネットの進化によりネットショップや通販での購買が増えていくことが見込まれる中で、実店舗での販売代行というビジネスそのものが大きな市場やビジネスチャンスとなることを想像し難い業態になってしまったように感じます。

 

だからこそ「自社」サービスの必要性を感じました。それは、ファッションだけでなくても飲食店でも何でも良いわけですよ。そうしないと、逆風が吹く中で会社が生き残ったり事業を拡大させることは難しいなと経営的な視点で感じていたのもあります。

 

企業発想ベースの「アパレル業」というのは時代とミスマッチと感じた

- そのような考えからhilal ayをスタートさせたわけですが、なぜリラックスウェアとフレグランスという複合ショップを目指したのですか?

フレグランスブランドの「LAYERED FRAGRANCE(レイヤードフレグランス)」様とは仕事でお付き合いもあり、社長さんの考えしかり、企業として製品との向き合い方に凄く魅力を感じていました。ですので、hilal ayの企画を考えた際にはぜひ取り扱わせて欲しいという気持ちがありました。そもそも、企業が考える大きなアパレルビジネスというビジネスモデルというものが、どうも今の時代とミスマッチな気がしていて。ユニクロさんや、GUさん、ZARA さん、ラルローレンさんとか、大きくアパレルビジネスを展開しているところにそこは任せておけば良いと言ったら変ですが・・・そう思ったんですよ。逆を言えば、我々がそこに割って入るのはものすごく体力が必要で、難易度も高いのではないかなと感じたというのはあります。

 

- 複合性と新たな組み合わせが新鮮ですよね。

一昔前のアパレルだと景気も良かったこともあり、出せば売れる、作れば売れるという時代があって、接客もガンガンして購買につなげるというスタイルだったじゃないですか。どこか売上に縛られて、人々のライフスタイルに無理やりファッションを取り込むみたいな風潮があったのかなと。今はそんな時代じゃないし、お客様が自ら手に取ってもらえるような商品展開をしていきたいという想いもありました。

 

- 実施に新たな業態とビジネスを始めて、想い通りに進んでいるのか。それとも思ったよりも苦労しているのか。始めてみてどうだったかを教えてください。

想い通りと言えば、そうではないし、苦労はしてるけども想定と違うということもないというのが所感です。そもそも、大金を投資して大きなビジネスに最初からするぞという事は考えていませんでした。資本が豊かな会社がそれをやれば良いだけで、我々はビジネスという目線以上にお客様目線で足取りは堅実に着実にと思っていたので。いわば、”アパレルの王道ルート”みたいなものを通ろうとは思っていないので。

でも、始めてみて少しづつ「なぜ我々を(出店の要望を受けて)必要としてくれるのか」というが分かってきた気がします。ハイブランドやファストファッションという括りではないニッチ市場にポジショニングしているのかもしれないですね。

 

 

クレセントアイズとして新たなチャレンジとなったhilal ayだが、市場の変化と時代の情勢に合わせて柔軟な発想と、新たな市場へのアプローチを続けている。ファッション業界の大不況をどのように捉え、次なるステップをどう考えるのか。それには、冷静な判断が必要とされる。次回(vol.02)ではクレセントアイズ社長の村田が次の時代をどう考えているのかを紹介したい。