クレセントアイズのコラムとして、小売業に従事する者のキャリアアップについては様々紹介してきた。実際に、クレセントアイズ内でも様々なキャリアポストが用意されている。それぞれのポジションによって役割は様々で、どのようなキャリアを歩むかによって役職や役割も変わってくる。

 

実際に販売を行う現場に目を向けてみると、販売職から店舗責任者となり、エリアリーダーやマネージャーというキャリアステップが多くみられる。そのキャリアステップの中で頭を悩ませる一つに「育成」というものが存在するだろう。販売員だった者が、ある日から店長になり自店の切り盛りから部下の育成を行わなくてはならない。また、エリアマネージャーやスーパーバイザーとなれば、管理職側の人間でさえも育成していく必要がある。

 

今回はクレセントアイズが運営するhilal ay(ヒララ)でマネージャーを務める渡邉に育成に関してインタビューを行った。

 

育成の鍵となるのは「コミュニケーション」

- 育成といっても様々な方法や向き合い方があると思いますが、渡邉さん自身がどのようなことを軸に育成や教育を行うようにしていますか?

僕の中で大事にしているのはコミュニケーションですかね。コミュニケーションといっても取ることが重要なのではなく、コミュニケーションをとって対象となる人がどのような価値観を持っているのか、どんな能力を持っているのか、そんなモチベーションで仕事に向き合っているのか、それらを把握することを心がけています。当然ながら、人それぞれ十人十色なわけで、それぞれを理解しなくてはどう向き合っていくのが良いのか分からないので。どんなに若いスタッフであろうが、勤続年数の長い年上のスタッフだろうがそのようにしています。

 

- 価値観や思考を理解するためにはどのような事をするのですか?

相手が重要に思っている事や考え、価値観などを共感することから始めています。例えば、ある男性スタッフがアイドルが好きだとして、その男性スタッフがなぜそのアイドルが好きになったのか、どんなところに興味を持ったのか、どんなところが魅力なのかを僕自身が興味を持って調べたりします。自分が知らなかったら、そもそも相手のことを理解するなんて机上の空論というか・・・本質的じゃないなというふうに感じたので。

 

- ある意味、共感を生むことでより強い関係性というか、深い関係性を築けて育成がスタートというイメージでしょうか?

男女差があるというわけではなく、女性の部下の場合の方が共感が必要なケースがよくあります。男性の場合だと、僕の関わってきた人だけかもしれませんが、出世に対する意欲が高く、こちらからアクションをせずとも働きかけてくる人がいたり、自分の自己実現意欲が高い人がいたりするので共感がそこまで必要じゃないケースもあったりします。

 

上司の「俺について来い」スタイルはもう時代が違うのかもしれない

- 先ほどおっしゃっていた関わり方は、過去の経験や成功・失敗体験から導き出しているのかと思われるのですが。

どちらかと言えば失敗体験からなのかもしれません。僕自身が社員になりたての時にクレセントアイズが店舗運営を代行する店舗に配属となりました。その時の店長がまさにリーダー的な存在で、しっかりと現場の陣頭指揮をとって隙のない仕事をする人でした。もちろん、オンとオフの強弱もあるので店舗のスタッフには”しっかりとついて行けば間違いない”といった雰囲気もありました。例えるなら「俺について来い」ですよね(笑) そう言っても、決して傲慢ではなく仕事に対してストイックな姿をスタッフも知っていたので、その人の人柄ありきだったんだと思います。

 

- どんな時に”このままじゃ良くない”と方向転換を図る転機があったんですか?

その後、店舗運営代行をしているクライアント先様の中目黒の店舗で店長という役割に初めて就きました。その時は、前の店長のイメージでしか店長という仕事がどういうものなのか、店長としてスタッフとどのように接していくべきか、どのように教育するのが良いのか分かっていませんでした。一ヶ月か二ヶ月したくらいですかね、お店の雰囲気が良くないというのと、スタッフ一人一人が同じ方向を向けていないということに気づきました。どこか全員が一人一人に対して協力的で意欲的な姿勢ではないなと感じました。そこで初めて「前の店長のスタイルは僕にはできないんだ」と気づきました・・・(笑) 当然のことなんですけど気付くのが遅かったです(笑)

 

とにかく自分の想いや方針をぶつけても、とにかく何のレスポンスもないんですよ。それとか、あからさまに納得のいっていない表情が見て取れるという・・・そうなると明らかにお店の雰囲気って良くないじゃないですか。

 

- 自身が気づかされて、そこからどのように変化していきましたか?

じゃあどうしたら良いんだろうという風に考えた時に、スタッフ一人一人と腹を割って話し合ってみようと思い、試みました。そうすると僕自身が気付けていなかった所や、細かな部分や変化に沢山気づかされました。とにかく、スタッフが言うことに自分なりに考えてみようと思い、積極的に意見を自分の中に取り入れるようにしました。

 

店長に初めてなり、うまくお店をお店をまわすことが出来ない。そして、お店の雰囲気もスタッフの意欲も良くない。そんな状況下でもスタッフ一人一人と向き合い自身の育成スタイルを見出した。vol.02ではどのようにして変化が現れ、自身・お店・スタッフが変わったいったのかを聞いた。