ファッション業界で働くとはどういうことなのだろうか。

 

クレセントアイズのスタッフとして何気なくこの記事を書いてはいるが、ファッション業界に並並ならぬ想いや意気込みがあって飛び込んだわけではない事を覚えている。だが、この仕事を続けているのに理由がないわけではない。ファッション業界で働くという事を紐解いてみたいと思う。

 

ファッション業界の魅力

人材不足と言われ続けているファッション業界。長年勤めて、去っていく人が多いのが現状だ。しかし、実際に辞めていった人の中には”ファッション業界”の魅力に、離れて初めて気づくという方も多くいる。

決して偏見ではないが、ファッション業界は他の仕事や業界に比べて特異な魅力が詰まっているような気がする。それは、リクルートサイトを検索する様に「労働賃金」「労働環境」「職場の所在地」「残業の有無」といった明確な条件や理由を挙げることは決してないだろう。

 

理由が無いが、衝動性と中毒性こそ魅力

私自身がこの業界に足を踏み入れた理由は特に無い。なんなら、今でも特別な理由が無い気がする。

「じゃあ、なぜ働いているの?」それが明確にならないことに魅力が隠れている気がする。

 

この業界で働くきっかけとなったのは、弊社でも関わりのある、トラディショナルトラッドブランドだった。

ある日、何気なく買い物に出かけた時に「カッコイイ」という単語でまとめられるほどの端的な感情が衝動的に湧いた。当然の事ながらお店で商品を購入した。

その帰り道、「あんなにカッコイイお店とブランドで働きたい」。そんな感情を持った事を覚えている。

そして、気がつけば販売員として、そのお店に求人応募していた。

 

“仕事”としての憧れと現実ギャップ

憧れからスタートしたアパレル業界だったが、その憧れはすぐに違った感情に変化していった。それは、働く現状や実際の販売現場にあった気がする。決して、その現場が良くないとか、会社が良くないとかではなく、”憧れ”だったものが手に入ってしまったからだった。

 

たまに訪れるショップの鮮度はいつも高く、いつも私をワクワクさせた。しかし、働くこととなり、毎日のように店頭へ立つとなると、商品やショップの新鮮さを感じにくくなってくる。そんな当たり前のことが理由だったのではないかと、今振り返って感じる。

 

朝はゆっくり出勤できる環境ではあったが、夜は遅く、休みは不定期。サービス業としては当たり前のことだが、そんな事すらも理解できないでいた自分は未熟だった。そして、アパレル業界の魅力に気づくわけもなかった。

 

アパレルの本当の姿を知る

小さな不安やを感じながら働き、気がつけばあっという間に約4年が経とうとしていた。職場での業務にも慣れ、多くの入社してくる社員とアルバイトを迎え入れ、多くの退職者を見送ってきた。そんな時、一つの転機が訪れた。

 

それは店長への昇進の打診だった。もともと、あまりマネジメント気質ではない私に務まるのか不安ではあったが、その当時に適任の人材もいなかった為、引き受けた。しかし、店長になるとこれまでやってきた業務が回らなくなることもあり、「これ以上、アパレル業界でキャリアを築きながら働くのは難しいのかもしれない」という想いが強くなっていったのを覚えている。しかし、時間の経過と共に業務にも慣れ、気づけばその店で一番の経験者であり、一番の知識を持つまでになっていた。

 

今思うと、特別意識していたわけではないが、その頃にアパレルの”勝手”を理解しだしてた様な気がしている。

それから、本当のアパレルの魅力に気が付いたのではないだろうか。

 

新たな眺め

今は部長という役職をいただき、店舗スタッフのマネージメント以外にも会社経営に関わる仕事をしている。人材確保に奔走したり、新規ブランドの企画を立案したり、新店舗の交渉を行ったりと仕事が多岐に渡っている。

今振り返ると、それらの仕事を行えているのも、悩み・もがきながらも続けてきた経験や、日々の業務の中で身体に染み付いた感覚だったりが役立っているのではないだろうか。

 

“カッコイイ”と感じたあの感覚は、今では商品開発や商品企画、ブランド設計などに非常に役立っている。それは、決してスレたものではなく、その当時の衝動性に近いものを感じられている。

ブランドや店舗のマネージメントには店長時代の様々な経験が生きている。トラブル対応やリスクマネージメント、スタッフのマネージメント。それだけでなく、現場で感じる消費者動向やお客様の購買行動も感覚的に捉えることができる様になった。

 

それらは、その当時感じていた感覚から変わることなく今も生きている。だから、アパレル業界が辞められない。今の私こそ、アパレル業界の魅力を一番に感じているのだ。

 

自分自身を一番に表現でき、感性に素直になれる。

いつまでも色褪せない自分自身を全力で楽しむことができる、それがアパレル業界ではないだろうか。