近年、ファッションシーンで再び注目を集めている通称「ネルシャツ」。古着を中心に、年代の古いヴィンテージネルシャツは5万円を超えるものも存在したりと、90年代に見せたアメカジブームを彷彿とさせる熱量を見せています。一見ベーシックでカジュアルなアイテムですが、実は長い歴史と多彩な種類、そして時代ごとに変化するトレンドを内包しています。メンズ・レディース問わず着用でき、コーディネートの幅も広いことから、若者から大人世代まで支持されているのが特徴です。
そんなネルシャツにはどんな歴史があるのか。なぜ人々から愛されるようになったのか。そして、なぜ現代にまたネルシャツ熱が再熱しているのか。魅力を踏まえて解説します。これからネルシャツを取り入れたい方、すでに愛用している方もぜひ参考にしてください。
ネルシャツとは?
ネルシャツとは、フランネル生地を使用したシャツの総称です。フランネルとは、綿やウールなどの素材を起毛加工した生地のことで、柔らかく、保温性に優れている点が大きな特徴です。一般的にネルシャツはチェック柄が多く、デニムシャツやワークシャツに比べて肌触りが良く、着心地が柔らかく、カジュアルからストリートまで幅広いスタイルに対応できるアイテムとして認識されているでしょう。この「使いやすさ」こそが、ネルシャツが長年愛され続ける理由です。
ネルシャツの起源
ネルシャツの起源は19世紀のヨーロッパにまで遡ります。寒冷地で働く労働者向けに、防寒性の高いフランネル生地が使われたシャツが誕生しました。その後、アメリカへ渡り、ワークウェアとして定着します。当時はいわゆる”仕事着”だったのです。特に開拓時代のアメリカでは、木こりや農夫、鉱夫といった人々がネルシャツを着用していました。この時代に誕生したのが、現在でも定番となっているのがチェック柄のネルシャツです。
ワークウェアからファッションアイコンへ
20世紀に入ると、ネルシャツは単なる作業着からカルチャーアイテムへと変化します。
1950年代にはアメリカの労働者文化の象徴的存在だったネルシャツも、1990年代に入りグランジファッションの流行に合わせてデニムとコーディネートするスタイルが大流行します。ダメージの入ったデニムパンツにブーツ、ラフにネルシャツを着こなすスタイルがアメカジファッションの秋冬の定番として流行するのです。
2000年代に入り、日本では原宿を中心としたストリートファッションが流行を見せます。古着屋で手頃に入手したネルシャツをスケーターやバイカーが愛用したことで、ドメスティックブランドやストリートブランドを中心にオリジナルのパターンを用いたネルシャツをリリースします。そのムーブメントの根底には、1990年代のグランジムーブメント時の「反骨精神」や「自由」の象徴として若者文化に深く根付くことになります。
ネルシャツの種類
ネルシャツと一括りにしても、多くの種類が存在しているのはご存知でしょうか。柄が違うのはもちろん、仕様や生地が違うものが多数存在しており、年代によって違いが存在しています。
①コットンフランネル
一般的で最もポピュラーな存在です。ヴィンテージでも多数存在しているのが、このコットンフランネルです。通称”ヘビーネル”と呼ばれるものもコットン素材で仕立てられているものがほとんどです。綿100%で、起毛が柔らかく、肌触りが良いのが特徴で、洗い込むほど風合いが増します。1940年代頃から着用されており、主にはワークウェアとして着用されてきました。
②ウールフランネル
高級素材として扱われ、防寒性に優れているのがウールフランネルです。
ウール100%または混紡の生地が多く、非常に暖かい上に、重厚感があるのが特徴です。1930年代〜1950年代のハンティング系のアイテムのネルシャツに多くみられます。
③プリントネル
チェックが「織り」ではなく「プリント」のものをプリントネルと呼びます。
従来のネルシャツは織りで柄を作っていましたが、プリントにすることで複雑なプリントパターンをデザインすることができるようになります。表面の凹凸が少なくフラット、軽やかな着心地でインナーとしても便利です。BIG MACやSEARSとったワークウェアブランで多くみられます。
チェック柄で差をみせる
①オンブレチェック
ネルシャツ界の王様とも言われることのあるオンブレチェックのネルシャツ。色がグラデーション状に滲み、境界線がぼやけているのが特徴です。当初はファッション性の高い生地としてではなく、糸の染色ムラや織り密度の差、起毛加工による色の混ざりという物理的現象が理由でこの柄が誕生しました。
このオンブレチェックがなぜ人気かと言うと、90年代に流行したグランジファッションやロックテイストのスタイルにおいて、黒とグレーのダークトーンのシャツを多くのアーティストが着用していたことが理由に考えられます。
古着では状態が良い年代物だと10万円超えも普通になっています。
②バッファローチェック(赤×黒)
アメカジのネルシャツの定番のイメージが赤と黒のチェックが特徴のバッファローチェックでしょう。木こり、ハンティングが由来のバッファローチェックはWoolrich(ウールリッチ)、 Five Brother(ファイブブラザーズ)のものが有名です。
③タータンチェック
タータンチェックは、もともとスコットランドの氏族(クラン)を表す伝統柄です。縦横の色糸を規則的に織られた生地は、色と配列で「家系・地域」を示していました。16〜18世紀には民族衣装(キルト)に使用されており、そのパターンを保温性の優れた起毛したネルシャツの柄としてと入れたことでスコットランドにて普及した後、19世紀に入りイギリスからアメリカへの移民と共に、ウールフランネルとタータン柄の織物がアメリカへ持ち込まれました。
その後、「視認性が高い」「汚れが目立ちにくく、生地が丈夫で暖かい」ということを理由にアメリカではワークシャツとして使われるようになりました。
なぜネルシャツがブームなのか?
今、ファッション界は90s〜00sリバイバルのど真ん中にいます。ファッショントレンドの中心は90年代後半〜2000年代初頭のY2Kやグランジといったスタイルです。
オーバーサイズ、レイヤード、古着ミックス、ダメージ・フェード感がキーワードとして存在している中でピッタリとハマるのがネルシャツだったということでしょう。また、”綺麗すぎない服”が求められており、完璧なコーデより”抜け”感を重視している人が多いのも事実でしょう。実際、カチッとしたスタイルよりも少し着崩したスタイルを自分らしさとして表現することで個性を表現することにつながっていると考えられています。
ネルシャツは進化し続ける定番アイテム
ネルシャツは、長い歴史を持ちながらも、常に時代に合わせて進化してきたファッションアイテムです。ワークウェアとして誕生し、カルチャーを経て、現在はトレンドアイテムとして再注目されています。種類・トレンドを理解すれば、ネルシャツはコーディネートの強い味方になります。ぜひ自分に合った一枚を取り入れてみてください。