主に中国人観光客に対して使われる『爆買い』とうワードが2015年の「新語・流行語大賞」に選ばれたのは、もはや1年前のこととなろうとしている。訪日外国人旅行者は2016年10月段階で2000万人を突破した。

 

 

 

しかし、『爆買い』に始まった1年の購買動向に影がかかりだしていることは、現場で働く者は感じているに違いない。

 

 

 

 1.外国人観光客の富裕層による高級品の買い回り

 

表参道や銀座といった、日本を代表する高級ブランドのブティックが並ぶ地域では、店内のお客様がすべて外国人といった光景をしばしば目にすることだろう。

訪日外国人客の来店と買上により高級品市場の売上は右肩上がりの一方だ。

 

Bain&companyの調べによると、2015年の高級品市場の成長率は為替レートの影響を受けながらも7%の成長を見せている。その日本の首都である東京はもはや、ニューヨーク、パリ、ロンドンに次ぐ世界で4番目の高級品市場となっている。

 

 

高級品に目を向ければ市場規模の拡大は続いており、『爆買い』というワードの恩恵を受けていることに違いない。しかし、ファッション市場の”マスマーケット”に目を向けると『爆買い』なる魔法のワードの魔法が解けかけているのではないだろうか。

 

 

 

2.『爆買い』をやめた外国人観光客

 

昨今、爆買いの中心にいた中国人観光客。ビザの緩和により、中国人観光客の数は増え続ける一途をたどっている。

しかし、中国人のファッションアイテムの購買が減少しつつある。その背景には、中国人観光客の訪日する”目的”の変化がある。

 

訪日目的が買い物ではなく、食や文化、教育や医療に変わってきているのである。とりわけ、個人での旅行者やリピーター旅行客の間でこのような変化が顕著である。

 

 

爆買いというモノの購買を求めてではなく、「体験」や「経験」を求めて日本にやってきているのだ。

 

 

現場で働く人で、中国人観光客に対して「最近、大きな買い物をしないな」、「購入額が小さくなったな」などと感じている人も少ないのではないだろうか。

 

 

 

3.ファストファッション先行の日本のファッション市場

 

数多くのブランドがひしめき合う日本のファッション市場においても、市場の変化が顕著である。毎年100以上のドメスティックブランドがデビューするも、毎年80以上のブランドが幕を閉じている。

 

長らくファッション市場をけん引していた百貨店が数ヶ月連続の前年割れを続けている事にもあるように、日本のファッション市場は間違いなく逆風にさらされているのだろう。

 

 

 

雑誌や広告で大々的に取り上げられる華やかなドメスティックブランドも、市場規模で見るとファストファッションの躍進に苦労している。

 

「ZARA(ザラ)」や「H&M(エイチアンドエム)」に代表される外資系SPAブランドの進出、「UNIQLO(ユニクロ)」を代表とするファーストリテイリングの躍進が目立つ理由として、消費者動向が「安くて可愛い」「安くてカッコいい」というモノに向いていることは言うまでもないだろう。

 

 

 

4.ファッション市場の”マスマーケット”のこれから

 

日本におけるファッション市場のトレンドは、”品質や特性”から”値段”に変化している。

ファストファッションを軸にビジネスを展開してきた「ファーストリテイリング」と「しまむら」の市場における規模は、ブランドファッションを軸に展開してきた「ワールド」や「オンワード」をはるかに上回る規模に成長している。

 

 

 

“値段”というファストファッションにおける最大の価値を上回る価値や体験を見出すことに、日本におけるマスマーケットの成長を見ることができるのではないだろうか。