ファッション業界のみならず、以前よりも耳にすることが多くなった「サステナブル」という言葉。あまり慣れない横文字のため”きちんとした意味がよく分かっていない”という方も多いのではないでしょうか。確かに、この意味を明確に答えることができる人は多いようで少なく、正確に理解している人が少ないように思えます。

「サステナブル」というワードの出現理由の一つにSDGsの存在があります。これまた昨今話題となっているワードですよね。

今回はサステナブルファッションとSDGsの関係についてまとめてみたいと思います。

 

SDGsとファッション業界の関係と課題

「サステナブル(持続可能な)ファッション」とは、原材料の調達から生産、流通、着用、廃棄されるまでのライフサイクルにおいて、将来にわたり持続可能であることを目指し、生態系を含む地球環境、ファッションに関わる人や社会に配慮した取り組みのことです。

ファッション業界に「サステナブル」が叫ばれるようになった背景には、世界的なファストファッションの需要拡大で大量消費、大量廃棄が繰り返されて環境への負荷が極めて大きいことや、生産段階の多くが途上国にあり、労働問題や人権問題などを抱えている事例が表面化したことにあります。また、工場や企業がグローバルに分業化されているため、複雑なサプライチェーンの全体像を把握するのが難しいことも国際的な課題です。

これらファッション業界の課題解決に向けた取り組みは、SDGsの目標8「働きがいも経済成長も」、目標12「つくる責任つかう責任」、目標13「気候変動に具体的な対策を」などに関わっています。

消費者から見た「エシカルファッション」とは

ファッションのサステナブルな取り組みは、「エシカルファッション」と言われることもあります。農薬や化学肥料に頼らないオーガニックコットンなど環境負荷の少ない素材、動物に配慮した環境下で刈られた毛皮や羽毛、生産者のために適正価格で取り引きするフェアトレード、リサイクルや地産地消など、「エシカル(倫理的)」な社会を意識したファッションのことです。「サステナブルファッション」と「エシカルファッション」の違いは明確ではありませんが、「サステナブル」を使うときは、環境面を中心とした企業側から見た取り組みを指すことが多く、「エシカル」を使うときは、「エシカル消費」といわれるように、倫理面を重視した消費者の行動、価値観を指すことが多いようです。

環境に負荷が大きいと言われるファッション業界

衣服の製造にはさまざまな資源が必要で、環境への負荷も発生します。過剰在庫やライフサイクルの短期化による大量廃棄も深刻です。

原材料の調達段階では、コットンなど天然素材の栽培のために化学肥料による土壌汚染や水を消費し、ポリエステルなど合成繊維の製造のために石油資源を使用し工場ではCO2を排出しています。環境省によると、国内で服1着をつくるのに排出されるCO2は約25.5kg(500mLのペットボトル約255本の製造時排出量に相当)、使われる水は約2300L(浴槽約11杯分)と換算しています。

低賃金・長時間労働による人権問題

ファッション業界の課題として、環境だけでなく労働・人権問題にも注目が集まるきっかけとなったのが、2013年にバングラデシュのラナ・プラザというビルで起きた崩壊事故です。ビルには世界的なアパレルメーカーの下請け縫製工場が複数入居し、縫製工場の労働者を中心に1000人以上が犠牲になったことから、「ラナ・プラザの悲劇」と呼ばれました。

事故で多くの犠牲者が出た背景には安全管理の不十分さがあったとされ、この事故を機に多くのアパレルメーカーの生産委託先である途上国の工場で常態化していた長時間労働、女性の低賃金労働、児童労働などの問題が浮き彫りになりました。

近年、アパレル業界を揺るがしているのが、中国・ウイグル族の強制労働問題です。新疆ウイグル自治区は、良質な「新疆綿」の産地として世界のアパレル企業が供給元としていますが、中国による強制労働の疑いがあるとして欧米が問題視しました。

2021年1月に、ファーストリテイリングが展開する衣料品チェーン大手「ユニクロ」のコットンシャツが、新疆ウイグル自治区の強制労働をめぐる米政府の輸入禁止措置に違反したとの理由から、米税関・国境警備局(CBP)によりロサンゼルス港で輸入が差し止められていたことが発覚。疑惑の目が向けられました。ファーストリテイリングは、「サプライチェーンで強制労働などの深刻な人権侵害がないことを確認している」などと説明に追われました。

 

消費に対する個人の意識の変化

サステナブルファッションの実現のためには、政府や企業の取り組みだけでなく、消費者が意識を変えることも欠かせません。2000年前後生まれのZ世代を中心とする若年層では、元の製品より付加価値をつけて再利用するリユースアイテムや古着を好んでおしゃれに着こなすなど、サステナブルファッションへの関⼼が高まっていると言われています。消費者も、「服を長く大切に着る」「リユースファッションを楽しむ」「環境にやさしい作られ方かチェック」「服を資源として再活用する」などの身近なアクションを意識することが求められているのではないでしょうか。