店舗運営
声がけされたくないお客様への接客術
最近では時代の変化と共に、「店員さんに話しかけられたくない・・・」そんなお客様が増えているのは現場で働く人ならば少なからず感じているのではないでしょうか。少し昔であれば、”気の知れた店員さんに接客されたい！”や”憧れのスタッフの人と話したい！”といった目的でショップを訪れるお客様が多かったように思えますが、今は少々違います。
そもそも、昔にも「店員さんに話しかけられるのが好きじゃない」というお客様がいたに違いない。しかし、店員さんと話さなくては好みの洋服を買うことができかったり、お気に入りの１品を見つけることができなかったのではないでしょうか。つまり、お客様自身の行動の選択肢が、インターネットやSNSの発展を遂げた今に比べて少なかったからかではないと言えるのではないでしょうか。
しかし、今も昔も人間としての特性に大きな変化は無く、「店員さんに話しかけられるのが好きじゃない」という人も、一度接客を受けた際に印象が良く仲良くなってしまえば、そんな風に思うことは無くなるように思えるもの。言ってしまえば、今と昔の「接点（タッチポイント）」に違いがあるだけではないではないでしょうか。
ファン獲得のためのSNS強化
昨今、レディースブランドが力を入れているのがSNSでのフォロワー獲得と言えるでしょう。これはブランド公式アカウントでのフォロワー獲得をだけでは無く、販売スタッフ個人のフォロワー獲得も目指しており、ショップ単位・スタッフ単位でのファン獲得を目指している。つまり、スタッフの「インフルエンサー化」が一つの顧客獲の得策になるのです。「インフルエンサー販売員」は、自分の店の商品を身につけて写真を撮り、ブログやＳＮＳで発信する。物を売るという感覚ではなく、”会える”・”同じ服を身につけられる”という体験を提供することで顧客化を図るのです。
これは昔でいう「カリスマ店員」と同じ原理とも思える。雑誌でモデルのようなファッションセンスを光らせ、それに憧れを抱いたファンがお店に来店し、顧客様となるというのと同じのように感じる。接点が雑誌やカタログだったのが、SNSに変化したと言えるのではないでしょうか。
変化した情報収集の方法。今はネットから
「ファッション情報はネットで・・・」というのが当たり前の時代。若者がスタッフとの会話よりネットに頼るようになったのは、2008年ごろからと一説では言われています。これは、iphoneが日本に本格的に上陸し、リーマン・ショックが世界を経済不況に陥れた年だ。
雑誌の休刊が相次ぐのにあわせて、スマホの普及が若者はファッションの情報をネットから得るようになるのを後押ししました。ネットでは、自分の思い思いフィルターを通して物を見ることができる。情報にも制限がなく、限られたスペースや一辺倒のトレンド情報に占有されることもないのです。
サイズや値段などのディテールを知りたければ通販サイトを覗くことで、容易に情報を得ることができてしまいます。
絶対的な法則と思われていＡＩＤＭＡの法則
このような情報がある中で、声かけは本当に売り上げにつながるのか？という疑問が浮かぶのは当然でしょう。
関西大学社会学部の池内裕美教授（消費者心理）によると、消費者の心理プロセスを表す「ＡＩＤＭＡ（アイドマ）の法則」に従えば、店員の声かけは「理にかなっている」といいます。
まず、店員の声かけで「注意（Attention）」を引き商品を認知させ、似合っている、流行しているといった情報を与えて「興味（Intrest）」を持たせる。そして、欲しいという「欲求（Desire）」を感じさせて、商品を「記憶（Memory）」させる。さらに試着という「行動（Action）」まで引き込めば、一気に購入に近づく。
だが、時代の変化と共に進化した情報化社会が、従来のAIDMAの法則に当てはめられていた行動に変化がみられる。SNSやインターネットで「注意（Attention）」を引き商品を認知させ、値段や詳細情報、スタイリング写真を交えて「興味（Intrest）」を持たせる。そして、欲しいという「欲求（Desire）」を感じさせて、商品を「記憶（Memory）」させる。そして、「行動（Action）」といった具合だ。
ショップでは「接客」に尽きる
前述にもある通り、お客様とブランドや商品との接点は時代の変化にあわせて、複雑化しているのは間違いないでしょう。しかし、購買行動や欲求には今も昔も大きな変化がないように思える。
様々なツールを駆使して、まずは商品やショップに興味を持ってもらう。そして、入店されたお客様、商品に興味を持ったお客様に対し、お客様が初めて興味を持ったものに共感し、少しづつ距離を近づけていきます。多くの言葉を使わずともコミュニケーションを取ることのできる世代が増えてきていることを念頭に接客を進めていきましょう。今までのような「可愛いですよね〜」「○○さんも着てるんですよ〜」と言った情報は既に収集済みのお客様も多いのでNGワードになり得るので注意しましょう。
商品を１から１０まで説明することが接客ではなく、お客様それぞれに最高のおもてなしをする事こそが『接客』であることを忘れてはいけないのです。それが、商品を説明するトークでなく日常会話に近しいものであっても、最後のレジの際の対応であっても、お客様が満足していただける環境を作るのも接客なのではないのではないでしょうか。今までと違った形の接客が求められる時代と言えるでしょう。