ミステリーショッパーの仕事をしている中で、特に気を付けなければならない点として、評価をする際の”ある傾向”です。それは、調査のために入店した際に販売スタッフが素敵な笑顔で目を合わせ挨拶すると、その後の調査項目の点数が上がる傾向にあるということです。

事前に評価すべき項目がしっかりと決まっていて、その項目ごとに評価をしなければならないのですが、最初の挨拶が好印象であれば、”他の対応もきっと良いはず”と期待値が上がってしまったり、挨拶が高得点だと評価が甘くなったりと、様々な要素から全体の評価が高得点になってしまいがちです。

 

この傾向の裏を返せば、最初の挨拶で好印象を与えることで、その後の接客においても良い印象を与えることができるということです。

第一印象が重要であるというのは、ミステリーショッパーの評価にもよく表れています。その為、ミステリーショッパー実施前には、調査員に挨拶の評価、ファーストアプローチの評価、セカンドアプローチの評価と分けて評価するように徹底します。そうすることで、評価の精度を上げることができます。

 

評価が下がってしまう声がけ

逆に評価が下がってしまう声がけがあります。

それは、「何かお探しですか?」というワードです。

こう聞かれると「いや、別に」と言いたくなってしまいます。更に、極端な言い分ですが「探し物がないと店に来ちゃいけないの?」という感情をももたらしてしまいます。さらにもう一つ、ちょっと商品を触っただけで「試着できますので〜」と詰め寄られケースです。触っただけなのに”気に入りました!”と言ったわけではないのに、さもお客様が商品を選んだかのような接客です。このような指摘に「他に良い言葉がけがないのか?」という意見が非常に多く見受けられます。

また、いきなり後ろから声をかけてくる販売スタッフも悪い第一印象を与えてしまいます。誰しも突然となれば驚いたりビックリしたりしますよね。

 

ミステリーショッパーでありがちな評価ダウン

弊社は、カジュアルな商業施設から、ラグジュアリーな商業施設まで、ミステリーショッパーを多数実施しています。

ミステリーショッパーを実施している中で「接客をしてもらえなかった」「挨拶がなかった」「販売スタッフ同士がおしゃべりをしていた」など色々な課題が上がってきます。

 

一方で、販売スタッフが上手にアプローチをし、ニーズを捉え、商品説明が上手でも評価が下がってしまうというケースもあります。

それは、事前にお客様(調査員)のニーズを聞いていないという場合です。販売スタッフが良いと思う商品を自分の価値観で勧めているため、お客様(調査員)が本来欲しいと思っているモノやカラー、サイズの情報を引き出せていないというケースです。もちろん、販売スタッフは良かれと思って自分のおすすめを伝えているのですが、調査員は事前にどの様なお客様を演じるのか設定してから調査をします。さらに、実際のお客様を想定するために購買目的も明確にしています。

 

お客様のニーズを引き出してこそ良い販売員

以前このようなことがありました。

出張で東京に来ていた男性が散歩用のカジュアルなパンツとトップスを持ってくるのを忘れてしまったため、購入しようとあるお店に入った時のことです。「ちょうど新商品が入荷したばかりです。大変おすすめの商品がございます」とお客様のニーズを聞かずにジャケットを勧められたとのこと。あまりに一生懸命説明してくれるので、本当に欲しいものはTシャツとカジュアルなパンツと言うことができなくなってしまったそうです。その後、販売スタッフには、「考えます」と伝えて店を出てしまいました。

セールストークが上手に伝えられるというのは、重要なポイントです。ですが、大切なのはそこではありません。そもそも、目的があって来店するお客様には、ニーズから外れれば、いくら魅力を伝えても響かないのです。逆のケースとして、ミステリーショッパーの調査員が魅力的な接客に出会い、ついつい買ってしまうというケースも少なくありません。ニーズを聴いて心に響くセールストークを伝えられると調査にも関わらず、自費で購入してしまうのです。

販良い接客を受けているうちにどんどん欲しくなるということはよくあります。それはミステリーショッパーの調査員も同様なのです。

 

調査員としての必要要素

そもそも調査員とはどの様な人なのでしょうか。

クレセントアイズでは、覆面調査と言えども、調査員の皆さんの素性を明確にし、調査の前の研修会を開くなどして、調査のクオリティを上げる様に心がけています。ですので、ウェブサイト上で募集しても、応募してくれた人が”どの様な人で何歳なのかわからない”といったことはありません。さらには、ラグジュアリー商業施設のミステリーショッパー実施の際には、会社経営をしている方に調査員をお願いすることもあります。商業施設でのミステリーショッパー調査を実施するにあたり、実際のお客様と同じ目線で価値や接客を考えることができたり、お客様と同じ生活水準と考えられるミステリーショッパーを実施する必要があるからなのです。

それは、昨年の調査員は厳しめで得点が低く、今年は甘い調査員で高得点。そのようなことがあってはならないからです。

実際のお客様と目線合わせることは非常に重要なことです。また、調査に伺う時間帯も重要です。その店の売上を阻害する様なことをしないためにも、できるだけ閑散時に伺う様にし、調査先の店舗の売上を取れる時間帯は避けるよう配慮します。

 

昨今のミステリーショッパーの調査のデータで分かるのは、「質問力の低下」が課題だと明るみになっています。優秀な販売スタッフがいる高得点の店舗では、最高の笑顔で挨拶で接客を開始し、「質問力」を活かして、さりげない雑談、そして質問と会話から今日の目的とニーズを掴みます。販売をする上で一切の無駄のない接客をしているのです。