『アパレル業界がかつてない不振にあえいでいる。』

 

新聞の見出しともなりえそうなセリフが、昨今のアパレル業界に見事なまでに当てはまる。大手アパレル4社の売上高は激減し、店舗の閉店やブランドの解散が相次いでいる。この理由は明確だ。

 

「服が売れない」

シンプルすぎるこのワードは業界において大きな意味を持つ。長年、アパレル業界をけん引してきた百貨店は売上を伸ばせず、事態は深刻さを増している。

 

『服が売れない』

この事態の理由の一つに情報化社会が考えられる。

 

スマートフォンが生み出した光と影

携帯型のパソコンと言っても過言でないほど進化を遂げたスマートフォン(以下SP)。なおも進化を続けるこの端末は人々に、利便性と機能性をもたらすとともに消費行動や購買行動に大きな変化をもたらした。

SPの進化によりネットショッピング=通称『EC』の台頭が目立つ。送料無料が一般的となりだしている昨今において、店頭での購買に比べ手軽に、そして簡単に購入することができるようになった。

世界最大手のモール”Amazon”においては、特定地域では購入後数時間で商品が届くサービスが始まっており、通常配送においても翌日着荷というのが常識となりつつある。

そうなれば、店頭で商品の接客を受け→ポイントカードを出し→ショッパーに包まれた商品を持ち帰るという作業がすべて省けてしまうのだ。

 

また、フリマアプリなるものの浸透が20代・30代前半の服を買うという行動に変化をもたらしている。服のリユース・リサイクルが当たり前となり、「欲しい服はまず、フリマアプリで探す」といった状況だ。

 

つまり、今まで普通に行われていた「欲しい服(又は高価な服)をお店に行って買う」という行動をしなくなっているのだ。

 

『服が売れない』理由のもう一つとして、「欲しいものがない」という人の増加も考えられる。SNSやアプリの充実により、情報を自由に取得でき、選択するゆとりが生まれた。また、「好きな時に、必要なものを」と時間という制限がなくなった。購買行動における貪欲さを失わせているとも考えられる。

 

しかし、個々人のスタイルが磨かれるといった良い面もあるが、共有化された情報に基づく消費を前提としていた売り場がいきなり立ち行かなくなっているというのが、現在のアパレル不振の一因にもなっているのではないだろうか。

 

数字で見るアパレル業界

矢野経済研究所が2017年10月26日に公表した「アパレル産業白書2017」によると、2016年の国内アパレル総小売市場は前年比1.5%減の9兆2202億円だった。アパレル市場全体は縮小しているものの、チャネル別ではECの拡大基調が続いている。

販売チャネル別の小売市場規模は、百貨店が同6.5%減の1兆9265億円、量販店は同7.2%減の8584億円、専門店は同0.4%増の4兆9826億円、その他(通販等)は同2.7%増の1兆4527億円となっている。中でもネット系の通販企業が引き続き好調を維持しているほか、実店舗を持つ事業者のオムニチャネルも活発化しているという。一方、カタログを主媒体としてきた総合系通販企業は厳しい状況にあると報告されている。

 

また、調査によると、国内のアパレル総小売市場規模は2年連続のマイナス成長。「婦人服・洋品」「紳士服・洋品「ベビー・子供服・洋品」のいずれも前年実績を下回っている状況だ。

 

数字からアパレル業界を紐解いてみても厳しい状況が続いていることが見て取れる。

 

外国人訪問客増加によるインバウンド

混沌としたこの現状でも明るい光が差し込んでいる。それこそ「インバウンド」だ。外国人訪問客は年々増加の傾向を見せており、アパレル業界にもうるおいを与えている。

ショップやブランドにおいても「前年よりも落とすと思われていた売上を、外国人観光客による売上でカバーできており、むしろプラスとなっている」と言う担当者もいるほどだ。

 

今後も訪日観光客は増える見込みで、外国人客への対応は必須となりそうだ。

 

 

アパレル業界のこの先に見えるもの

消費者の購買行動の変化やトレンドの変化は続くと考えられる。

若年層を中心に「ファストファッションのブランドだから恥ずかしい」という感覚はない。昨今、銀座を歩いている人を眺めていると、多くが持っているのが、ハイブランドや百貨店ではなく、ファストファッションのショッパーを持っている人が目につく。”ファストファッション”や”どこどこブランド”といった概念が消え去り、「良いものは良い」や「私が良いと思ってものが良い」という感覚が芽生えている。

 

それは、自身のアイデンティティの表現方法の変化とも考えられ、バブル世代は「高級ブランドで着飾って、スポーツカーに乗って」といったブランドを身にまとうことでの自身のブランディングという感覚がなくなっているとも言える。

 

情報化社会の進化により、昔とは違って情報は自分の手で選択するものとなった。

それは、『本物の目を持つ』という一面にもつながっていると私は考える。本物の目を持つことは「〇〇ショップで買う」や「〇〇ブランドの服」という概念を排除し、”本当のもの”を自らの目で選ぶという購買行動における選択眼とも言える。

 

つまり、今後は消費者自身が自身の手で”本物”のものを選ぶようになっていくと言えるだろう。

 

クレセントアイズの運営する店舗では、接客テクニック以上にお客様目線に立った「おもてなし」を重視している。多くの人に好かれる”本物のお店”を目指しています。