先月までの穏やかで快適な気温が嘘かのように、気温も下がり、冬物商戦が本格化したこの頃。夏物に比べ、単価の高いアウターが中心の冬物に苦戦しているショップも多いのではないでしょうか。
アパレル市場としてはファストファッションの流通により、市場規模の縮小が評論家によって叫ばれている現代。
ショップ(自店)の売上が伸びずに苦戦している店長職やマネージャー職の人も多いのではないでしょうか。
“ディスプレイを変更したのに”、”ブログをいっぱい書いているのに”、”お客様にいっぱいお声がけしているのに”など理由を考えているのに、答えが見つからない。
もしかすると、答えは意外とシンプルで簡単なものかもしれません。
あらためて売上を上げるための施策考案に役立つ、思考法と分析方法をご紹介いたします。意外にとってもシンプルな考え方で分析できちゃうのです!
既に実践済みの人は、再確認に!
初めての人は、試してみてください!
1. 売上の仕組みとは?
source/Style with heart
“売上とは?”
一見簡単な質問に見えて、十人十色の回答がある質問。
こんな単純な質問を投げかけられた時、皆さんはどのような回答をしますか?
ここでの答えは簡単です。
売上=購買件数×購買単価
売上に悩む時ほど、色々な情報を得るばかりに本当の答えを見失ってしまうものです。
この考えを基に、ショップの現状を分析してみることで、答えが見つかるかもしれません。
2. 『三方よし』の商売こそ商売繁盛の基本!
source/次世代ビジネス研究所
『三方よし』 by 近江商人
source/三方よしを世界に広める会
どこか古めかしい近江商人の言葉も現代のマーケティングに欠かせない要素となっているのです。”三方よし”という言葉は現代では『3C』と呼ばれるマーケティング用語になっています。
アパレル業界用語という訳ではありませんが、マーケティング用語で『3C』というワードをよく耳にします。
3Cとは、Customer(顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)の頭文字をとったマーケティング用語です。(これこそ、まさに”三方”!)
売上に悩む要因が自店にあるものと決めつけ、自店内部に介在する課題・問題を必死に探してないでしょうか。課題・問題は自店(Company)ではなく、お客様(Custmer)や競合他社(Competitor)にある可能性もあるのです。
もちろん、3C分析はそれぞれの職種や役割など、様々なレベルに応じて行う必要があります。
昨シーズン大人気だった人気品番。今年も売れることを想定し販売強化を行うも、売上を伸ばせず苦労している。といった事はないでしょうか。
今年の顧客ニーズは違うところにあるかもしれません。
はたまた、ライバルブランドが同型商品を割安で展開しているかもしれません。
3C分析を用いて、あらためてショップ環境の分析を行ってみてはいかがでしょうか。
3. お客様の心をつかむ4Pとは
source/matryx
アパレル業界のマーケティング用語としてヘビーローテーションされるのがこの『4P』というワードです。4Pとは製品(Product)、価格(Price)、流通(Place)、プロモーション(Promotion)の頭文字をとったマーケティング用語です。
自社の製品はどのようなものか、価格は適正なのか、販売している製品と立地条件や環境にミスマッチはないか、自社で製品の魅力をプロモーションできているか。
4Pの整合性がとれているかを考える必要があります。
この4Pを簡単な例とともに考え方を整理してみます。
【CASE】
“上質なカシミアで作られた、肌触り最高の一品。”
source/dante
Q:商品は良いのになぜ売れないのか?
A: 商品(Product)は最高の仕上がりだとすると、価格(Price)は市場相場に比べ高く設定されていませんか?もし、高額商品だとしたら、販売しているロケーション(Place)は富裕層の立寄る場所でしょうか?セールスポイントである、” 肌触り最高の一品”をお客様に宣伝(Promotion)できているでしょうか?
【CASE】
“Simple is bestを体現した、使い勝手抜群Vネック白Tシャツ”
source/1piu1uguale3
シンプルで使い回しのしやすい、Vネックの白Tシャツ。価格も安く、誰でも手の出せる価格が魅力的な商品。
Q:シンプルで使い回しがしやすくて、値段も安い、今シーズンの注目商品!売場面積も広く、多くのお客様が手に取るものの、レジに持ってくる方が少ないのはなぜなのか?
A:価格(Price)は安く、購入しやすい価格。お客様の来店も多く、売場(Place)としては好条件。売場面積も十分に確保し、大き目のPOP(Promotion)も準備。しかし、Tシャツのクオリティ(Product)に目を向けてみると、Vネックが深すぎて女性の着用に向かない、生地が薄く下着が透けすぎてしまうといったことはないでしょうか?
簡単な例とともに紹介した4P(マーケティングミックス)。
今一度、この考えを基に自店を分析してみてください。
4. ニッパチの法則(2:8の法則)は意外にあたる
source/bono pizza
「ニッパチ?何だそれ?」
そう思われても無理のないネーミングセンス。そもそもニッパチならぬ2:8(二割と八割)の法則とは、どのようなものなのか。
決してピザを十等分した内の二枚という意味ではございません!
ニッパチの法則とは正式名称がパレートの法則とよばれる、イギリスの経済学者ヴィルフレド・パレートによって提唱された法則であります。
なぜ”ニッパチ”と呼ばれるようになったかというと、
パレートによって唱われた「経済において、全体の数値の大部分は、全体を構成するうちの一部の要素が生み出している。」「2割の高額所得者のもとに社会全体の8割の富が集中し、残りの2割の富が8割の低所得者に配分される。」という法則が基となっているのです。
この法則は社会現象や自然現象に当てはまるとも言われ、広まりました。
この法則をショップに当てはめてみると、「全商品の内、売上上位20%の商品が売上の80%を構成する。」や「すべてのお客様の内、20%のお客様が80%の売上を作る。」といった感じになります。
では、ニッパチの法則を用いてどのように自店を分析したら良いのでしょうか。
5. ABC分析を活用してみよう!
ニッパチの法則を数値化し、見える化してくれるのがABC分析です。
ABC分析とは、商品を売上金額や売上個数などの重要度によって分類する方法で、重点分析などと呼ばれることもあります。
例えば“売上高”を指標に分析します。
売上高順に商品をランキングし、売上高の7割を占める商品群をA、売上高の2割を占める商品群をB、売上高の1割を占める商品群をCとします。
つまり、商品群Aが最重要の売上要素であり、次いで商品群B、商品群Cとなるのです。
「何でも良いから、とにかく売ろう!」と試みても、商品群Aの在庫管理や販売強化を行わなくては、売上を伸ばすことなどできるワケもないのです。
靴屋さんを例に見てみましょう。(参考値として算出)
売上高の約7割を占める商品群A。売上高の約2割を占める商品群B、売上高の約1割を占める商品群Cに分類します。
前年の売上と比較した際に、数値が低い“ヒールシューズ”がパッと見だと売上減の要因に感じますが、売上構成3割を占める”メンズスニーカー”の売上減を解消できれば前年売上を超えることができるのです。
このように、ニッパチの法則を発想のもとにABC分析を行うことで、売上の構成を数値化し、分析を行うことができるのです。
6. まとめ
専門的な用語が並んだ今回。難しい言葉に感じますが、よくよく理解すると、意外にとってもシンプルで明快なものばかり!
ここまでご紹介した、考えや分析方法はアパレル業界では普遍的に活用されており、アパレル業界で働く方にとって知っておいて損はないはず!
今回紹介した内容を基にショップの課題や問題の解決に役立ててみてはいかがでしょうか。
top photo/東洋経済