当たり前ではありますが、仕事をしていく上で従業員同士のコミュニケーションは重要です。

コミュニケーションがきちんと取れていないと仕事がスムーズに進みません。そのため、クレセントアイズではスタッフ間のコミュニケーションを円滑にするための研修を行なっています。あくまでも、日本人同士のコミュニケーションです。日本人同士でも苦労することがあるコミュニケーションを国や文化が違う外国人と円滑にするのですから、かなりの心構えが必要です。日本では暗黙の了解の文化が非常に根強く残っています。相手に全てを伝えなくても、相手が汲み取って理解する、いわゆる空気を読むというのは海外では通用しないもの。

 

曖昧な表現が生むミスコミュニケーション

海外のシューズブランドの仕事をしている時のことです。日本のお客様は靴においては特に「クオリティ(品質)」を重視します。履き心地はもちろん、少しの傷も許しません。そのブランドでは、デザインで履くアクセサリーのようなコンセプトをもとに靴を作っていました。そんな商品展開を続ける中で、お客様から品質についてのクレームをを立て続けに受けたことがありました。ブランド内でも「これではいけない!」と品質向上による信用を取り戻すべく、海外の靴製造工場にクオリティを上げるべく指導の為に渡航する肝入りよう。しっかりとした交渉を行うためにも通訳も同行するという気合の入り方でした。

 

工場の担当者と話した際に、より良いモノづくりをしてもらえるよう、「いつも頑張って靴を作ってくれてありがとう」「皆さんの頑張りは理解しています。しかしながら靴のクオリティーが下がっています。」「今まで以上にクオリティを上げる努力をしてほしい。」伝えました。ですが、しばらく経ってもクオリティは変わりません。慌て気味に現地工場の担当者とコンタクトを取り、言われた言葉が「前回、日本から来たブランド担当者に褒められた」というものでした。

知らず知らずのうちに日本人的なコミュニケーションを取ってしまっていたのです。気分を害することなく”しっかり頑張っていいものを作ってほしい”というつもりで曖昧な表現をしてしまったばかり重要なワードが伝わりきっていなかったのです。海外ではハッキリと自分の意志や思ったことを口にして伝えなくてはならないのです。これこそがコミュニケーションの文化の違いなのです。つまり、「あなたたちの仕事はクオリティが低い、大切なお客様からクレームが続出している。もっといいものを作ってほしい」とハッキリと伝えなくてはこちらの意図が伝わらなかったのです。

 

日本人的コミュニケーションの弊害

日本人は大まかな指示を出しても察して行動してくれるスタッフがいます。海外の多くの人は、具体的に指示をしなければその通りに行動しません。それは、悪気があるのではなく、そもそもコミュニケーションの方法が日本と大きく違うからなのです。指示が正確に相手へ伝わっていなければ、業務に重大なミスを発生させてしまう可能性もあります。外国人スタッフにも日本でのコミュニケーションについて勉強をしてもらう必要がありますが、それと同様に外国人を雇用する企業も同様に勉強をする必要があります。

 

留学生とホストファミリーの間でもこんなエピソードがあります。遅く帰ってきた留学生に心配した日本人のお母さんは、自分の息子に注意するように「何時だと思っているの?」と遅く帰ったことを注意したのです。その留学生はふと時計を見て「22時30分です」とそれだけを答えたのです。「何時だと思っているの?」という言葉の意味合いとして「帰ってくるのが遅すぎではないか?」というニュアンスが込められているのですが、外国人には伝わらないのです。つまり、「遅いので心配しました。もっと早く帰ってくるように。」と伝えなくてはこちらの意図が伝わらないのです。

 

日本人は「話をきちんと聞いている」というアピールをするために”あいづち”を打ちます。しかし、外国人にとっては、話をしているのに妨害されているように感じて気分を害してしまいます。そのため、あいづちをうつのは日本人固有の配慮の文化だと言うことを教える必要があります。逆に日本人の話は”あいづち”を打ちながら聞く必要があると言うことを理解させる必要があるのです。

また、日本人は相手に気を使い「はい」と返答しているようで実は遠回しに「いいえ」と拒否しているということが多々あります。海外でははっきりと「Yes」「No」を口にするため、どっちとも取れない返答では外国人は困惑してしまいます。

 

特に注意する必要があるのは「大丈夫です」という便利なワードです。

「この商品は私に似合わないので要りません」と言う意味なのか?

「この商品が気に入りました」と言う意味なのか?

日本人でも曖昧な表現が故のわかりづらい表現は、外国人にとってはもっとわからないでしょう。

 

日本人は「ありがとう」の意味でも「すみません」という言葉を口にすることがあります。これも外国人には理解し難いことかもしれません。もしかすると、日本は世界でもコミュニケーションの習慣として少し変わった習慣があるのかもしれない。ということを理解しなければなりません。日本人である私達が世界の常識を学ぶべきなのかもしれません。

職場の労働環境をより良く保つためには、既存の従業員と異なる習慣や文化を持つ外国人に対して、きちんと理解を示すことが大切です。