販売の現場では「いらっしゃいませ」の挨拶から接客がスタートします。こんな光景は、接客業を経験したことがなくても、一般的な接客マナーとして広く知られています。接客業をしていると、当然のことながら基本的な接客のルールやマナーがあるものです。しかし、上司や先輩に言われなくても実践しなくてはいけない、暗黙のルールやマナーも存在しています。

 

その一つの暗黙のルールやマナーの一つが「言葉遣い」です。正しく使えているようで使えていない”敬語”や”丁寧語”が接客の中で沢山存在しています。ショップで働く方々に「あらためて確認」してほしい、接客・販売での言葉遣いをご紹介します。たくさんある職業の中でもショップスタッフは多くの人と接する仕事。ショップやブランドによっても異なりますが、性別や年齢を問わず様々なお客様と話す機会が多くあります。そのため、正しい言葉使いができるということが大切な要素に。ぜひ、この機会に再確認してみてはいかがでしょうか。

 

要注意!バイト敬語は、実は正しくない。

学生時代に経験したアルバイト(=バイト)。その中で接客をしたことがあると、なんとなく「私、ちゃんと敬語が話せている」と思っている人も少なくありません。しかし、バイトで使用されている敬語の中には、正しくない日本語や言い回しが多くあります。よく耳にするフレーズでも、実は間違っている接客用語を「バイト敬語」と呼びます。指摘されないと気づかないことも多いバイト敬語。あなたは大丈夫ですか!?

 

その1.「○○円からお預かりします」

「〇〇円をお客様からお預かりします」という言葉のお客様を省略して「○○円から」になったようです。お客様という言葉を含まないので、「○○円をお預かりします」が正しい表現です。

×「1万円からお預かりします」

○「1万円、お預かりします」

 

その2.「どちらにいたしますか?」

謙譲語の「いたす」を使用しています。謙譲語は自分の行為について述べる際に使用する言葉です。相手の行為に対して使用するのは不適切な表現で、お客様への言葉としては使えません。尊敬語を使用して「どちらになさいますか?」が正しい表現になります。

×どちらにいたしますか

○どちらになさいますか

 

その3.「レシートのお返しです」

お釣りは返すものですがレシートは渡すものです。「レシートでございます」と表現しましょう。お釣りを先に渡してから、レシートを渡した方がより丁寧な接客になります。

 

その4.「よろしかったでしょうか?」

お客様に確認する際に、よく使われる言葉です。一見、丁寧に聞こえる表現ですが、実は正しくない表現です。間違っているポイントは、過去形で聞いていることです。正しくは、現在進行形にして「よろしいでしょうか?」という表現です。

×よろしかったでしょうか。

○よろしいでしょうか。

 

その5.「了解しました」

「了解」という言葉は、相手の意思を受け取り、了承するという意味でよく使われますが、目上の人やお客様に対して使用する言葉としては不適切です。了解は対等、もしくは目下の人に使う言葉なので、お客様に対しては「承知しました」もしくは「かしこまりました」と言いましょう。

×了解しました

○かしこまりました / 承知しました

 

その6.「なるほどですね」

相手の意見に同意や尊重の意思を伝える時によく聞く表現です。親しみを込めて使う人もいますが、「なるほど」という言葉は、目上の人が同等、もしくは目下の人の意見を聞いた時に使う言葉なので、目上の人やお客様に対して使う言葉としてふさわしくありません。この場合には、シンプルに「そうなんですね」と返すのがスマートです。

×なるほどですね

○おっしゃる通りです

 

その7.「◯◯のほう」

普段から話上手と言われている人に多い言い間違いの一つです。「色違いのほう、お持ちしました」「こちらのほうでよろしいですか?」など、リズムとして悪くないため、聞き手も話し手も違和感がないケースもあります。しかし、厳密には「ほう」という表現は方角を示す時に用いられる言い方です。そのため、洋服を指す場合には「色違いをお持ちしました」「こちらでよろしいですか?」という表現が適切です。

×こちらの方ほうでよろしいでしょうか。

○こちらでよろしいでしょうか。

 

その8.「◯◯になります」

丁寧な印象の言い回しなので、間違った敬語だと思わずに使っている人が多い表現です。例えば、「新色になります」「入荷したばかりのアイテムになります」などで、よく使いがちです。しかし、「なります」は変化を表す場合に使う言葉なので、変化しない商品に対して使うのは間違っています。「○○でございます」もしくは、シンプルに「◯◯です」という言い方が正しい敬語です。

×「ご試着室はこちらになります」

○「ご試着室はこちらでございます」

 

その9.「とんでもございません」

お客様にお礼を言われたり、褒められたりしたときに、謙遜する意味で使われる言葉です。日常的に使わないからこそ、間違って使っていても気づかないかもしれません。しかし、この言い方は「とんでもない」で一語となり、これに「ございません」をつけるのは日本語の表現自体としても不適切です。もし言うのであれば、「とんでもないことでございます」が正しい表現ですが、すこし堅苦しい印象を与えてしまうので、「とんでもないことです」や「恐れ入ります」という言い方にしましょう。ただし、お客様からのお礼や褒め言葉に対して、否定することは、時としてお客様の善意や好意を無駄にすることになります。続けて、「ありがとうございます」や「光栄です」などをシーンによって言い添えることをおすすめします。

×とんでもございません

○恐れ入ります

 

 

必ず覚えておきたい接客で使う基本7用語

接客時に頻繁に使用する用語です。これら必ずマスターしましょう。

 

①いらっしゃいませ

「いらっしゃいませ」とはお客様を歓迎する、店内に迎え入れるための大変重要な言葉です。むやみやたらにお客様の顔も見ずに言うのはダメです。ご来店されたお客様の方を見て、笑顔で挨拶をしましょう。

 

②かしこまりました

同じ意味合いの「分かりました」「了解しました」は丁寧語です。より敬意を示すためにもお客様や目上の人には「かしこまりました」を使うようにしましょう。

 

③少々お待ちください

お客様をお待たせしてしまう時に使う言葉です。フィッテングやお会計時に、この言葉を言うか言わないかでお客様の印象は変わります。「少々お待ちいただいてもよろしいでしょうか」や「少々お待ちくださいませ」にするとより丁寧に聞こえます。

 

④お待たせいたしました

お待たせしてしまった場合は、「お待たせいたしました」と声をかけるようにしましょう。待たせた時間が短い場合でも、お客様が気持ちよくお買い物をするためにこの言葉はきちんと伝えるべきです。

 

⑤恐れ入ります

「ありがとうございます」の代わりに感謝を伝える意味です。この言葉には「感謝」の他に「恐縮」という意味も込められいます。お客様に何か聞きたい時や手間を取らせてしまう場合、何か頼み事をしたい時などにクッション言葉として活用する事が出来ます。

 

⑥ありがとうございます

接客の基本フレーズです。お客様が商品を購入された時やお店を出ていくときは、感謝の気持ちを込めて「ありがとうございます」と伝えるようにしましょう。スタッフ同士で頼み事をした場合も、御礼はきちんと伝えるようにしてください。

 

⑦申し訳ございません

お客様からクレームがあった場合やご迷惑をお掛けしたときは丁寧な言葉で対応しましょう。よく「すみません」というフレーズを使いがちですが、丁寧さに欠けていると判断されるので避けるようにしましょう。謝罪をする際は「申し訳ございません」と真摯に対応することが大切です。