年々増えている外国人販売スタッフ。国という壁が少しづつ低くなり、更なるグローバル化の始まりを感じます。これから更に外国人販売スタッフが増えることでしょう。ですが、これは日本人が販売スタッフを”やりたがらない”ということではなく、インバウンド需要の増加に合わせて多言語を使うことができる人材が重宝されたり、国籍で職種が制限されることのない世の中になりつつあるという意味合いです。

 

そんな中、ある日こんな出来事がありました。

羽田空港で大きな声でお菓子を売る販売スタッフに出くわしました。素晴らしい笑顔で、通りを歩く人達に声を掛けているのです。近くに寄って話しかけてみると中国人とのこと。フライトの時間も迫っていたこともあり、お菓子のセットを一つ購入し「頑張ってね!」と声を掛けお店をあとにしました。とても感じの良い挨拶と接客を受けた清々しい早朝の空港。思わず「引き抜きたい・・・」と思ってしまいました(笑)

ふと振り返ると、新型コロナウイルス感染症が蔓延する前の日本にはたくさんの外国人観光客によるインバウンド需要により経済は上向きでした。特に影響の大きかったのが中国からの観光客です。

 

中国からの観光客が少しづつ増え始めた頃、銀座の街を歩いていると無謀にも信号無視をする中国人のかたを多く見ました。ある時には、中国の方がトイレから出てくるとティッシュが小さなゴミ箱に押し込んであったりしました。ほとんどの商業施設が中国人のマナーの悪さに困っていたのは、記憶に新しいのではないでしょうか。ですが、半年もするとすっかり日本のマナーを習得し、言葉を聞かないと日本人なのか中国人なのか分からないほど文化の違いが埋まっていき、様々な商業施設で大きく売上に貢献してました。コロナウイルスの蔓延により、2020年頃から2022年初旬はビジネス目的の外国から訪日するがほとんどでした。最近では、規制が緩和されたことや円安のおかげで、商業施設での買物が促進されてるように思われます。これから、またインバウンド需要に備えた環境整備が必要でしょう。

新型コロナウイルスが蔓延する少し前、中国の主要都市に日本のとあるブランドの旗艦店をオープンさせるため、現地のスタッフの教育を任されておりました。その時のエピソードです。

男性の販売員が帰り際に、店頭にディスプレイしてあるマフラーを自分の首に巻き外に出て行きました。「あれ?」と思いましたが、通訳を連れて「そのマフラーをどうするのですか?」と聞くと、「明日持ってきますから大丈夫です」とのこと。そこで、”商品を持って帰るのは良くないこと”だと説明しましたが、盗んでるのではなく、明日持ってくるのだから良いのではないかと納得していない顔をしていました。

中国での他クライアント様の案件を担当している時に気付かされたことがありました。なんと、店頭で着用している洋服は制服として支給されたものではなく、全て商品で毎日取り替えながらお客様にアピールしている認識なのです。現地ではほとんどのブランドがそうしているとのことで、新たな気づきとなりました。だからこそ、中国人のお客様は日本に来ても、店頭にディスプレイしている商品を購入したがらず、バックストックから新しいものを持ってきてほしいというのだと納得させられたことがあります。日本では考えられないことですが、それが中国の常識なのです。

 

また、中国の有名百貨店では、とても美人な女性販売スタッフがレジの下にしゃがみ込み見えないようにカップラーメンを食べているのです。研修中に休憩を取ると、スタッフは地べたに座り、飲み物を飲んだり、おやつを食べたりしているのです。更に、その後のゴミ処理も問題があり、ゴミ箱がいっぱいで溢れているにも関わらず誰も片付けようとはせず、挙句の果てにはその辺にゴミを投げるのです。

注意すると「それは私たちの仕事ではない」と言われました。片付けて欲しいと言うと、掃除をする階級の人の仕事を取ってしまうことになるから、やらないと言われました。中国では掃除は、階級の低い人の仕事で、その人たちの仕事を奪うようなことはしてはいけないというのが常識なのです。本来なら掃除をするスタッフを雇用するべきだったのかもしれませんが、販売スタッフに店頭の仕事を全て覚えてもらうためにも、中国人販売スタッフに「現状復帰をしてほしい」と伝え、元に戻してほしいという旨を伝えると掃除もしてくれるようになりました。

 

その他にも文化の違いにより驚いたことがありました。人件費が当初の計画より高いのです。何度もシフト表と差し合わせて計算しても給与支払額が合わないのです。なんと、店舗でシフトを作成し、販売スタッフに渡していても休みの日に出勤してしまうのです。理由は稼ぎたいからという、なんとも単純なもの。日本ではあり得ないと思うことでも中国では常識なのです。そのくらい日本の常識と中国の常識が違うのだと気付かされました。

 

これから、インバウンドの需要増や訪日観光客の増加が考えられることから、外国人販売スタッフが現場に必要になるのは目に見えています。円安が続くと日本で働く外国人は、減ってしまうという懸念もあります。それでも、日本で働きたいという外国人販売スタッフのために、私たちが彼らのために出来ることを考えていかなければなりません。次回は、日本語の難しさや文化の違いについて伝えていきたいと思っています。