事実として昨今では、ミステリーショッパーをほとんどの商業施設で実施しています。

では、なぜ商業施設は定期的にミステリーショッパーを実施するのでしょうか。

 

それは、商業施設やブランドが独自に自社のサービスレベルを知り、改善すべきポイントを見つけ出し、サービスの向上に役立てるためです。そして、定期的に実施することで販売スタッフの皆さんに緊張感を持ってもらうためです。私たちは事前に、コンサルティングを担当するブランドの店舗リサーチを行います。コンサルティングをする前に、そのブランドの店舗の状態を把握しておくことが非常に重要だからです。

 

ミステリーショッパーの必要性とは

実際、いくつかのブランドでミステリーショッパーを実施した際に、忙しそうに私の横をすり抜け、目を見ず誰に向かっているのか分からない様な挨拶で「いらっしゃいませ」を連呼しているというケースは少なくありません。スタッフの数が少なく、業務が増えて、さらにスタッフへの負担が大きくなっている現状があったとしても、それではいけません。

 

昨今では、お客様の目を見て挨拶もせず、接客アプローチに来る気配がないようなスタッフも多い傾向にあります。さらには、接客アプローチがないのでこちらから話しかけ接客を受けてみると、質問した内容にだけ答えてくれると言ったシンプルな接客をするスタッフが多いようにも感じます。「私は忙しい」とアピールしている様なスタッフも存在したりします。

そもそも、お客様からの質問に答えるのは接客業をしているならば当たり前のことです。単に受け答えをするだけでは良いサービスとは言えないでしょう。もちろん、スタッフの能力値によってその印象は変わりますが、店舗スタッフ全員が接客業における優先順位 ①接客 ②業務 というのを間違えているというケースも少なくありません。

 

ですが、その逆のケースも存在しています。それほど集客がなく、スタッフがなんとなく時間を持て余している様な印象の店舗もあります。覇気がなく、暇な時間をスタッフ同士のおしゃべりで時間潰しをしているというが一番良くありません。空いた時間で業務をテキパキこなすわけでも無いというのは、楽しくイキイキと仕事をしているといった印象が持てないでしょう。

 

各店舗ごとの実態と状況を細かく知ることが課題解決に

では、全ての店舗で同じ様な状態なのでしょうか。また、何が原因なのでしょうか。

「調べる必要がありますよね!」

 

全店のサービスレベルを調査する必要があると思い、ミステリーショッパーの実施の提案をしました。こちらからの企画が承認され実際に販売スタッフの皆さんに”ミステリーショッパーを実施します”とお伝えしました。すると、「この人が調査員か?」とミステリーショッパーの成績を意識するかのように、お客様に対して毎日気を抜かずに接客してくれていました。その後、その店舗に再度来店してみると、目を見て挨拶をしている上に、接客力が向上していました。このようなケースは少なくありません。

 

これは、販売スタッフの皆さん全員がポテンシャルを持っているということ。

つまり、やればできるのに、継続してホスピタリティーを発揮することが難しいということであり、毎日同じことの繰り返しに心がマンネリ化してしまっているのです。ですが、接客販売というのは毎日同じことの繰り返しではありません。たくさんのお客様が来店しますが、お客様にはそれぞれ人生があり、販売スタッフは、そのお客様の貴重な時間を共有しているのです。そう考えることで、ホスピタリティーマインドを持ち続けることができるでしょう。

 

さらに別の事例を紹介します。

ブランドからのご依頼でミステリーショッパーを実施する際には、あらかじめシフトをいただいておくことがあります。店長がいる時といない時の店の状態を調査することができますし、シフト通りに出勤しているのかの確認することもできます。商業施設のミステリーショッパーではそこまではできませんが、シフトを事前に知っていることで店頭のスタッフが新人なのかベテランなのか把握でき、調査をより詳細に実施することができます。

実際にあったエピソードですが、あらかじめ頂いていたシフトでは店長が遅番で出勤する予定でした。ですが、いつになっても店長が出勤してこず、「何かのトラブルか、急にシフトが変わったのか?」と本部のスーパーバイザーに確認を取ったところ、なんの報告も来ていないとのこと。後からわかったのですが、その店長は、よく欠勤をする上に報告をしないことがあるとのこと。これでは、共に働く働くスタッフがやる気をなくすのは当然です。こう言ったことは異例のことですが、ミステリーショッパーによって店長の振る舞いが分かるということもよくあります。

 

 

ミステリーショッパーでポイントが低い店舗に圧倒的に言えること。それは、「お客様に喜んで頂きたい」「お客様を満足させたい」「お客様を感動させたい」という意識が足りていないということです。自身の熱量を注ぐ対象が作業や上司に向いてしまい、お客様に向けられていないのです。

ミステリーショッパーを実施することで、お客様の立場でその店の評価をすることができます。現状が把握でき、次の課題解決の方法を見つけることができるのです。