今、若者を中心に人気を博しているファッションアイテムがデニムです。古着の年代物のデニムから、新作のコレクションではデニムのアイテムがランウェイに登場しています。まさに空前のデニムブームと言えるでしょう。また、デニムの価値が見直され、年代の古いリーバイスのデニムには数千万円という価値がつけられたりとデニムに関する注目度の高さを感じます。

 

今回はそんなデニムブームのきっかけともなる、デニムに関する歴史を辿ってみたいと思います。

 

デニムの誕生とその起源

デニムの歴史は、17世紀のフランスに遡ります。デニムという名前は、フランスの「ニーム（Nîmes）」という都市から来ており、ここで生産された丈夫な綾織りの布「セルジュ・ド・ニーム（Serge de Nîmes）」がその始まりです。この生地は、最初はウールやシルクを使って作られていましたが、次第に綿が主流になり、現在のデニム生地に近い素材が誕生しました。

 

アメリカに渡ったデニム

デニムが広く知られるようになったのは、19世紀のアメリカでの出来事です。ゴールドラッシュに沸くカリフォルニアでは、鉱山で働く人々のために丈夫な服が求められました。そこで登場したのが、リーバイ・ストラウスという商人の存在です。リーバイ・ストラウスは、サンフランシスコで金鉱労働者向けに丈夫なズボンを作り始めました。そのズボンに使われた生地が、フランス産のデニムでした。

リーバイ・ストラウスは、デニム生地のズボンに金属のリベット（鋲）を使い、ポケットなどが破れないように補強しました。この工夫が大きな成功を収め、ジーンズが誕生するきっかけとなったのです。リーバイ・ストラウスのジーンズは、次第に労働者だけでなく、広く一般にも浸透し、アメリカのアイコンとなりました。これが後世まで続くデニムブランドでもある、リーバイス社の始まりとなるのです。

 

デニムの普及とカウボーイ文化

デニムは、20世紀初頭には、アメリカの西部開拓時代におけるカウボーイや牧場仕事に従事する人々の服としても定着しました。デニムの丈夫さと耐久性が、過酷な環境での作業にぴったりだったからです。西部劇映画では、カウボーイがデニムのジーンズを履いて登場するシーンが多く、デニムは”西部の精神”を象徴する素材として扱われました。作業着や仕事着としての実用性を評価され普及していきました。

 

若者文化とファッション革命

1950年代に入ると、デニムはアメリカの若者たちの間でもファッションアイテムとして人気を集めるようになります。この時期、ハリウッド映画のスターや音楽のアイコン、特にジェームス・ディーンやマーロン・ブランドがデニムを着用する姿が注目を浴びました。特に「アメリカン・ジーンズ」として、ジーンズは若者文化や反抗的な姿勢を象徴するアイテムとなり、ファッションの一部として根付きました。また、ビートニク文化やカウンターカルチャーが盛り上がり、デニムは反骨精神を持つ人々の象徴としても広まりました。これにより、デニムはもはや作業着や西部劇の衣装にとどまらず、若者のライフスタイルに欠かせないファッションアイテムという存在となったのです。

 

デニムの市場拡大

1970年代から1980年代にかけて、デニムはさらに多様化しました。リーバイスやWranglerなどの伝統的なブランドに加え、多くの新しいブランドが登場し、デニムのデザインやカット、洗い方にもさまざまなバリエーションが生まれました。特に、ストレッチデニムやダメージ加工（ヴィンテージ風）の登場により、デニムはよりファッション性を高め、カジュアルからフォーマルな場面まで幅広く着用されるようになりました。また、この時期には日本をはじめとする他国でもデニムの人気が高まり、特に日本のデニムはその品質の高さで評価され、世界的に注目を集めるようになりました。

 

ファッションの不朽のアイコンとしてのデニム

現在、デニムはどんな時代にも存在する不朽のファッションアイテムとなりました。ジーンズをはじめ、デニムジャケットやデニムシャツなど、さまざまなアイテムが登場し、季節を問わず愛用されています。加えて、デニムの加工技術も進化し、エコ・フレンドリーな製造方法や、サステナビリティを意識したアイテムが登場するなど、環境への配慮がなされるようにもなっています。デニムは、ただの作業着からファッションの象徴、そして文化的なアイコンへと変遷を遂げ、今もなお世界中で愛され続けています。デニムの歴史は、その時代ごとの社会的な背景や文化を映し出す重要な素材として、これからも注目され続けることでしょう。

 

 

今ではファッションアイテムの一つとして重要な存在となっていますが、その昔は作業着や仕事着としての実用性が重視された衣類の一つでした。そのデニムが現代ではヴィンテージファッションや古着ファッションの代表として新たな脚光を浴びているのです。ファッション好きは、あらためてデニムの存在を意識してみるのが良いかもしれません。