古くは10世紀以上前、ファッションの中心は古代ヨーロッパにありました。17世紀から18世紀にかけ、現在のアメリカをイギリスとフランスが植民地化したことにより、アメリカにもファッションの波が訪れます。ここからヨーロッパとアメリカのファッションはそれぞれ違う道筋を辿ることとなります。優雅さと繊細さを持ち合わせるヨーロッパ。一方で、労働者階級を中心に効率的かつ使いやすさと丈夫さを兼ね備えた服装が広まったアメリカ。

19世紀以降のヨーロッパファッションについて簡単にご紹介したいと思います。

 

現代ファッションに大きな影響を与えている19世紀

19世紀のヨーロッパにおいて大きな変化を与えたのは間違いなく「産業革命」と言えるでしょう。イギリスにおいて自由主義運動が活発化します。中産階級にも政治への参加権が与えられたことにより、社会の仕組みは大きく変革を迎えます。一足早く産業革命を完成させ、工業化を図ったイギリスは工業製品はもちろん、軍事品の拡充を進めました。ナポレオンによる支配から解放されたヨーロッパ各国も一斉に工業化を進めます。その産業革命はファッションにも大きな影響を与えます。産業革命により服の大量生産が可能となったことにより、一般庶民にも服が行き渡るようになります。

この時代に男性に流行したファッションが「スーツ」スタイルです。ウール素材のタイトなジャケットとズボンのスーツに、シャツとネクタイという現代におけるフォーマルファッションが誕生し、流行しました。アウターとしてはロングコート、アクセサリーとしてシルクハットや中折れハットという、典型的なトラッドスタイルが誕生しました。

 

ファッションがより細分化された20世紀

20世紀のファッションは、社会的、文化的な変化を反映しながら進化し、多様なスタイルが生まれました。ここからは現代のファッションのサンプリングやリバイバル元にもなっているため馴染み深いものがあるかもしれません。

 

時は1900年代に入り、ファッションは凄まじい勢いで近代化と多様性を身につけます。

優雅で繊細なデザインが流行し、装飾品として複雑な刺繍やレース、宝石などを身につけることで豪華さを身につけるようになります。分かりやすい例えですと、映画タイタニックがまさにその世界観と言えるでしょう。ヨーロッパでは階級制度が色濃く、労働者階級と中流階級以上の人々との違いは身につけているものの「質」が分かれていました。また、労働者向けの作業着が誕生したことにより、鉄道員や炭鉱員、工場勤務などそれぞれの仕事に合わせて都合の良い服が作られるようになりました。

 

1920年代に入ってからは、フラッパースタイルと呼ばれる女性はボーイッシュで自由なスタイルを求め、ウエストを隠すドレスや短いスカートが流行しました。一方で男性のスーツスタイルにも変化があらわれ、特にストライプのスーツ、ベストも合わせてスリーピースのスタイルも人気となりました。若い人のファッションへの影響も大きく、自由で革新的なスタイルが特徴的な時代でした。

 

1930年代は経済的な困難と社会の変化に影響を受けながらも、エレガントで洗練されたスタイルが特徴的でした。この時期は、特に映画やハリウッドの影響を受けた華やかなスタイルが人気となりました。ハリウッド映画が流行し、映画スターのファッションが多くの人々に影響を与えました。映画の中で見られるエレガントなスタイルが、一般の人々の憧れとなりました。ドレスやブラウスには、肩パッドやフリル、ドレープなどの装飾が施され、エレガンスを追求したスタイルが人気に。短いボブやソフトなウェーブスタイルが流行し、髪には花やリボンを飾ることが一般的でした。

 

戦争の影響を色濃く受ける形となった1940年代。第二次世界大戦の影響で、シンプルで実用的なスタイルが求められました。特に、女性は男性の職業を代替するため、動きやすいファッションが普及しました。戦争による物資統制の影響も大きく、シンプルかつ、質素なファッションを人々は強いられました。戦争中は落ち着いた色合いが好まれ、カーキやグレー、ネイビーが主流でした。戦後は明るい色合いや華やかな柄が再び人気に。戦後の1947年、ディオールが発表した「ニュールック」は、ボリュームのあるスカートと細いウエストを強調するスタイルで、戦後のファッションに新たな華やかさをもたらしました。

 

戦争が終わり、再び華やかさを取り戻した1950年代。ニュールックをした女性が街中には溢れ、タイトなトップスにロングスカート、カーリーヘアーといったスタイルが大流行しました。ドットや花柄といった華やかな柄をあしらったものも多く登場した。男性のファッションにも変化が訪れます。ポロシャツやチノパン、デニムパンツといったアイテムが登場し、今までのトラッドテイストから、それを着崩したスタイルが流行します。

 

近代ファッションの誕生

1970年代に入り、若者が社会に対して与える影響力が強まります。音楽、アート、政治的な活動を通じて若者が社会に対して大きな影響を与え出しました。アメリカの大不況からヒップホップの文化が生まれたのもまさにこの時代です。この頃からファッションは多様性を持ち、それぞれのスタイルが確立されていきます。メアリー・クワントが提唱したミニスカートが女性の間で流行し、若い女性たちの間で自由でボーイッシュなスタイルが広まりました。膝上丈のスカートは、反抗や解放といった主張の象徴となりました。英国のモッズ文化の影響で、タイトなパンツやブレザー、ボーダー柄のトップスが流行。靴はローファーやブーツなども人気となりました。タイトでスリムなスーツが流行し、特にビートルズなどの影響でスタイリッシュなジャケットが人気を博しました。カジュアルスタイルも引き続き人気となり、ジーンズやTシャツ、カジュアルなシャツが一般的になり、特に若者たちの間で自由なスタイルが好まれました。70年代後期にはヒッピー文化が登場します。カジュアルでボヘミアンなスタイル、フレアパンツや民族的な模様、ビーズや刺繍の施された服が特徴でした。

 

その後、ヒッピーファッション、ディスコファッションといった、文化的な側面に即したファッションスタイルが人気となります。

1980年代になると、ファッションは個性や大胆さがより強調され、特にパンク、ニューウェーブ、ディスコなどの影響を受けたスタイルが広がりを見せます。この時期は、エネルギッシュで視覚的にインパクトのあるファッションが流行し、さまざまなトレンドが生まれました。経済成長とともに、ファッションは多様化し、特に若者文化が強く影響を与えるようになりました。音楽や映画、テレビの影響で新しいトレンドが次々と生まれた年代とも言えるでしょう。

新たなファッショントレンドとしては、アスレジャーというジャンルが確立されました。スポーツウェアやトレーニングウェアが日常的に着用されるようになり、リラックスしたスタイルが人気となり、ウールやリネンという素材に加えてナイロン素材がトレンドインしました。

 

90年代には音楽カルチャーがファッション業界と密接な繋がりを見せます。アーティストが着用するスタイルそのままに、グランジ、パンク、スケーター、ヒップホップなどのスタイルが誕生します。ファッションのトレンドは大きな波から、より細分化され、性別という違い以外にも年齢やスタイルによって細分化されていきました。ストリートファッションが生まれたのもこの年代と言えるでしょう。

 

 

簡単には語り尽くすことのできないファッション史。ファッションはオシャレという簡単なワードでまとめることもできなく、時代背景というワードにまとめることも難しい、一つの文化とも言えるでしょう。ここでは紹介しませんでしたが、2000年代に入り、よりファッションは複雑化していきます。あなたの身の回りのファッションを見返すと、どこにルーツがあるのか探してみても面白いかもしれません。