消費の多い欧米を中心とした小売ビジネスと日本国内における小売ビジネスには少々違いがあるように感じます。アメリカでは当たり前に店舗で使われているサービスが、日本ではまだまだ普及していなかったり、ヨーロッパでは売上を伸ばせている業態や品種でも、日本国内での消費は大きくなかったり・・・そのようなギャップがいくつか存在しています。
今回は海外の小売の現場では当たり前となっている事と、日本の小売現場との違いについて説明したいと思います。
急速に進むデジタルシフト
これは日本同様に急速にデジタルシフトが進んでいます。COVID-19のパンデミックにより、日本同様に欧米各国でも店舗の閉鎖や外出制限が影響し、多くの消費者がオンラインでの購入を余儀なくされました。一方で、オンラインストアでは自宅で簡単にショッピングができることから、オンラインショッピングの定着が一段と進みました。オンラインショッピングの急増にあわせて、ECサイトやモバイルアプリの利用が一般化しており、多くの小売業者がオムニチャネル戦略を採用し、オンラインとオフラインの統合を進めています。
オムニチャネル戦略は常識のごとく勧められており、小売業者は、オンラインストア、実店舗、モバイルアプリを統合し、一貫した顧客体験を提供することを非常に重視しています。オンラインショッピングにおいては、購入後に自宅へ届けるという流れが一般的でしたが、最近ではオンラインで購入し店舗で受け取るサービスが人気を集めています。また、AIデータを活用し、顧客の行動データを分析、パーソナライズされた商品提案やマーケティングを行う企業が増加しています。オンラインストア内にはチャットボットでカスタマーサービスを行えるようになっており、顧客とのインタラクションを効率化するために、AIを活用したチャットボットが導入されています。
オンラインにおけるPR戦略としてはソーシャルコマースの概念が急速に浸透しています。SNSプラットフォーム上で直接商品を購入できる仕組みが進化し、特に若い世代に支持されています。インフルエンサーとのコラボレーションを通じて、商品やブランドの認知度が高め、即時プラットフォーム上で買い物ができる仕組みになっています。
サステナビリティのトレンド
海外の小売業界におけるサステナビリティのトレンドは、環境への配慮や社会的責任を重視したビジネスモデルが増えていることを反映しています。
エコフレンドリーな製品の展開は各社・各ブランドがテーマとして必ずと言って取り入れている重要なワードローブです。リサイクル素材を使った製品を提供し、廃棄物の削減に努めています。
また、持続可能な原材料=オーガニックやフェアトレードの素材を使用することで、環境と社会に配慮した商品を提供する企業が増加しています。さらには、サプライチェーンの透明性も重要視されており、日本国内以上に消費者は製品がどのように生産されたのか、どこから来たのかを知りたいと考えるようになっています。企業やブランドはサプライチェーンの透明性を高めることで価値や信頼を得る傾向が強いです。
古着ブームの一端とも言えるリサイクルプログラムも急速な拡大をしています。古くなった商品の回収と再利用を心がけており、使用済み製品の回収プログラムを設け、リサイクルや再利用を促進する企業が増えています。これにより、廃棄物を減らし、循環型経済を支援するという意思表示も含めた取り組みも行なっています。
データを活用したパーソナライズ化
AIやデータ分析を活用して、顧客の嗜好に基づいたパーソナライズされたショッピング体験を提供する企業やブランド、店舗が欧米では増えています。顧客の購入履歴やブラウジング行動、ソーシャルメディアのインタラクションを通じて、顧客の嗜好や行動を分析し、体験としてアプトプットするという手法です。
パーソナライズ化したオムニチャネル戦略も盛んです。オンラインとオフラインの両方で顧客がシームレスに体験できるように、パーソナライズされたコミュニケーションやオファーを提供し、地域ごとの特性や文化を反映させた商品提案やプロモーションを行なっています。レビューや評価を活かし、他の顧客に対しての信頼性を向上させる、ある種のプロモーションも重要視されています。
キャッシュレス決済
海外の小売業界におけるキャッシュレス化は、急速に進展しています。日本国内においても急速に普及が進んでいますが、海外ではより一層普及が進んでいます。
Apple Pay、Google Pay、WeChat Payなどのモバイル決済が人気を集め、簡単かつ迅速な支払いが可能になっています。それらと同様にアジア圏で広がりを見せているのが、店舗での銀行口座から直接送金が可能なQRコードをスキャンしての支払い方法です。紙幣を持ち歩くリスクも軽減されるほか、商業施設以外の屋台やマーケットにおいても利便性が高いとされ、普及が進んでいます。
セルフチェックアウトのシステムも様々なところで使用されるようになっており、自動化されたチェックアウトシステムにより、待ち時間の短縮が実現する他、スタッフコストの削減にもつながっています。アメリカではAmazon社の「Amazon Go」のように、スタッフがいない店舗が増加し、キャッシュレス決済が標準になっています。
SNSの活用
海外の小売業界におけるSNS(ソーシャルメディア)の活用は、ブランドの認知度を高め、顧客との関係を深めるための重要な戦略となっています。
ブランドコミュニティの形成をはかることを目的として、一方的な情報発信だけでなく。顧客との直接的な対話を通じて顧客からのフィードバックをリアルタイムで受け取り、コミュニケーションを促進するマーケティングが盛んとなっています。ダイレクトにブランドと繋がることで、よりロイヤリティを感じやすく、直接的なコンタクトを可能にしています。ショッピング機能の導入はinstagramを中心に進んでおり、オンラインストアを介さずとも、プラットフォーム上で直接商品を販売することが主流となっています。
これは、日本においてもトレンドとなっていますが、インフルエンサーマーケティングはより効果的なターゲット層へのアプローチができるようになります。特定のニッチな市場に影響力を持つインフルエンサーと提携し、効果的に商品の露出を増加させたりと、活用方法も以前より精度を意識する傾向にあります。
ソーシャルリスニングを用いたいデータ分析も盛んで、トレンドの把握をするためにSNS上での顧客の声やトレンドを分析し、多角的なマーケティング戦略に活かす事例も増えています。顧客の反応を見ながら迅速に戦略を調整し、エンゲージメントを最大化するという目的があります。。
国内の小売業と大きく差はない、海外の小売事情ですが、より精度を上げ、よりマルチにユーザーへアプローチすることが海外では進んでいます。
これを参考に、日本における小売事業にいかしてみてはいかがでしょうか。