若者の間では、どこか古めかしくも新しいファッションのスタイルが大流行しています。そのファッションのルーツとなっているのは90年代のファッションであることは間違いないでしょう。その流行に合わせたかのように、90年代に一世風靡をした、様々な機能を搭載したハイテクスニーカーが各ブランドから続々とリリースされています。ですが、最先端のトレンドを探ってみると、対極にあるローテクスニーカーに今一度スポットが当たっています。今回は、不変のデザインで多くの人々を魅了してきた「ローテクスニーカー」の魅力について紐解いてみたいと思います。
そもそもローテクスニーカーとは?
1990年代に大流行したNIKEのエアマックスや、Reebokのポンプフューリーなどのハイテクスニーカーの対極をなす存在が「ローテクスニーカー」です。当時の最新機能を搭載したハイテクスニーカーと比べて、古くから定番として展開されているCONVERSEのオールスターやadidasのスタンスミスなどがローテクスニーカーと呼ばれるように。名作と称されるモデルが多く、時代を超えて多くの人に愛されてきたローテクスニーカーは、その時々の流行やスタイルに左右されない、永遠の定番スニーカーと言えるでしょう。
時代を辿れば、スニーカーは元来全て「ローテク」だったのです。
スニーカーの起源とは
アメリカのチャールズ・グッドイヤー氏が、1839年、硫黄とゴムを混ぜて実験している最中に、ストーブの上にその混合物を落としてしまいました。それに気付いて拾い上げると、ゴムは適度な弾力をもっていたのです。これにヒントを得て、靴のソールの開発に成功したことがスニーカーが生まれたキッカケとなりました。当初は自転車などのタイヤ製造工場が余ったゴム素材でシューズを製作していましたが、これがスニーカー製造の始まりと言われています。その後、1916年に誕生したシューズブランドが世界初のスニーカーブランドの「ケッズ」です。
ブランド名は”kids(子供)”とラテン語の”ped(足)”を組み合わせた造語で、発売当時は相場の1/10の価格帯でシューズを発売したことから、「アメリカの子どもはケッズで育つ」と言われるほど人気のブランドとなりました。スニーカーが生まれてから、ケッズのシューズはテニス、野球、サッカーなどのスポーツ用品として人気となりました。また、スポーツの枠組みを超え、カジュアルシューズとしても履かれるようになりました。1949年、同じころケッズと人気を二分していたのが現代でも人気のスニーカーブランドの一つでもあるコンバースです。ニューヨークを中心にした東海岸ではコンバース、西海岸のカリフォルニアではケッズが人気だったことから「東のコンバース、西のケッズ」と呼ばれていました。
文化としてのスニーカー
スニーカーが一つの文化として成り上がったのが、1984年にNIKEがバスケットボール界のスーパスター”マイケル・ジョーダン”と組んで「エア ジョーダン」というシューズを作った時代に遡ります。スニーカーが文化として成立するようになったことに、スポーツ選手の着用とスポーツシューズとして親しまれるようになったことが理由としてあります。1970年代後半から80年代前半にかけて、アスリートの名前が使われたモデルが多数登場しました。当時のバスケットボールシューズの定番は、コンバースの「CHUCK TAYLOR ALL STAR」で、プーマやアディダスといったブランドもその流れに加わるようになりました。
1984年当時、マイケル・ジョーダンは有望な新人だったが、まだプロの試合には出場したことがなかった。それでも、ランニングシューズのメーカーとしてしか知られていなかったNIKEがジョーダンにブランドの未来を託して250万ドル(約3億4千万円)で5年間という大規模な契約を結びました。その契約の一作品目が1985年に発売されたナイキの「エア・ジョーダン」なのです。この戦略は成功し、ジョーダンはバスケットボール界に名を刻む選手となり、エア ジョーダンの人気も爆発的に上昇したのです。
スニーカー文化はバスケットボールのコートの外にも飛び出すようになります。1986年には人気ヒップホップグループ「Run-D.M.C.」が「My Adidas(マイ・アディダス)」というシングルをリリースし、アーティストとして初めてスポーツ用品メーカーのadidasと契約。その直後、アメリカのロックバンド「ニルヴァーナ」のボーカルでもあるカート・コバーンが、CONVERSEを反抗と若者の象徴として愛用したことから一般ユーザーからの支持を得ました。
現代にムーブメントを起こすローテクスニーカー
90年代の雰囲気そのままに、現代のファッションアイコンとして人気となっているローテクスニーカー。どんなアイテムが流行っているのでしょうか。
NIKE Cortez(コルテッツ)
ナイキの不動の名作コルテッツはブランド創業当時から人気モデルであり、ナイキのローテクモデルの大本命と言えばコルテッツです。
当時のランニングシューズとして人気だった当時の雰囲気そのままに、レトロな印象を感じさせてくれる1足です。
adidas SAMBA(サンバ)
アディダス最古のスニーカーとして知られる「サンバ」。1950年に雪で凍ったピッチ上で履くサッカーシューズとして誕生し、何度も改良が重ねられた後の1972年、現在の「サンバ OG」につながるモデルを発表。薄くしなやかなレザーのアッパーにスエードのT-トウ、ラバーソールと、オリジナルモデルを忠実に再現したデザインは、今もなお世界中の人たちに愛されています。
CONVERSE ALL STAR(オールスター)
1917年に創業者「マーキス・M・コンバース」により、バスケットボール専用シューズとして生産が開始されました。通称「Chuck Taylor」は、アメリカのプロバスケットプレーヤー「チャールズ・H・テイラー」がオールスターを着用したことから普及し、今もなおその人気は凄まじいものがあります。