街を歩いていると訪日観光客の姿をよく見かける・・・そう感じている人も多いのではないでしょうか。

実際、2020年のパンデミックも終息を迎えて以来、2022年より少しずつ訪日観光客の数は増加を見せ、2024年4月の訪日外客数は304万人と、二ヶ月連続で300万人超えと、高水準となったパンデミック前の2019年度の月間最高数を上回る数値となった。経済的な側面を見ると、2023年訪日観光客の旅行消費額は計5兆2923億円で過去最高を記録し、訪日観光客による経済的な影響も年々大きくなってきている。それに伴い、売り上げを伸ばしているホテル・企業・小売店なども多いことが考えられる。

都心部で商売を行う上で、インバウンド需要は今後のビジネスの発展に絶対不可欠な存在となりつつあるでしょう。また、昨年より続く円安のトレンドは終息を見せていないことから訪日観光客の国内での消費行動は加速しているのも頷ける。訪日外国人の消費動向として一番多い消費額は「宿泊代」となっており、それに次いで「買い物代」、「飲食代」となっている。宿泊費が全体の33%で最も大きく、次いで買物代が31%、飲食費が22%と、前年同期と比較すると、買物代の割合が増加しており、訪日外国人が日本国内でのショッピングを楽しんでいる様子がうかがえます​。今回は「買い物代」=「小売」にフォーカスしてインバウンドと小売業界の経済的な影響について考えてみたい。

 

円安による国内消費の加速

2024年7月19日に観光庁が発表したインバウンド消費動向調査によると、2024年4-6月期の訪日外国人旅行消費額は2兆1,370億円に達し、前年同期比で73.5%増加、2019年同期比で68.6%増加しました。これにより、訪日観光客による商品動向は加速していることが分かる。国籍別に見ると、中国からの旅行者が最も多く、消費額は4,420億円で全体の20.7%を占めている。次いで、米国が2,781億円(13.0%)、台湾が2,639億円(12.4%)、韓国が2,232億円(10.4%)、香港が1,743億円(8.2%)と続きます​。やはり、パンデミック以前にも話題となった「爆買い」は継続されていると言えるだろう。

2022年1月に1ドル=115円だった為替レートが、2023年10月には151円台にまで円安が進み、2024年7月には161円を記録した。円安の影響もあり、日本は買い物をするのに最適な”買い物大国”という位置づけとなり、さらに訪日観光客による消費動向は加速を見せることが考えられる。ショッピングが大きな魅力の一つとなっているのだ。

街の小売店にとってインバウンドは大きなビジネスチャンスということも考えられる。

 

アパレル業界にみるインバウンドの影響

2019年、長引く個人消費の低迷にパンデミックが追い打ちをかけた。ここ数年、アパレル業界は苦境に立たされていた。そのアパレル業界に陽が差してきた。

国内アパレル小売業2,443社の2023年決算(1-12月期)は、売上高が4兆8,891億5,300万円(前年比9.2%増)、最終利益が2,451億1,800万円(同41.0%増)で、2年連続での増収増益となった。ここ数年、緊急事態宣言の発令や外出自粛、店舗の休業、消費低迷など、パンデミックによるアパレル小売業者の受けた影響は深刻だった。最も影響が大きかった2021年の売上高は4兆2,894億9,900万円で、コロナ禍前の2019年を5,860億4,700万円も下回った。しかし、パンデミック期間中に加速したオンラインでの販売(EC)の健闘、インバウンド需要の急回復により大手アパレルメーカーを筆頭に大きく売り上げを伸ばすことができた。長引く円安により、衣料品の輸入価格の高騰など、コストアップを招いているが、国内での販売は堅調に伸ばすことができているのが現状だ。

ここにもインバウンドによる消費(買い物)の影響が色濃く出ていると言えるだろう。

 

では、これから先、インバウンド需要を伸ばすためには小売店はどのようなサービス向上を図るのが良いのだろうか。

 

小売店で取り組むインバウンド対策

実際に、小売店ではどのようなインバウンド対策を実施するべきなのでしょうか。

 

免税対応

まずは、訪日外国人が日本で買い物をすることのメリットを享受できるよう、免税対応が必要と言えるでしょう。

現在の制度では、一定の要件のもとで、「一般物品※1」と「消耗品※2」の合算で下限額(5,000円以上)を満たせば免税販売ができます。これにより、訪日外客は免税で買い物がしやすくなります。しかし、免税店にはさまざまな対応が求められます。免税販売手続きにおいては、税制で電子化が必須とされており、免税店は購入記録情報(購入者から提供を受けた旅券等に記載された情報及び購入の事実を記録した情報)を、インターネット回線等により、国税庁へ電磁的に送信する必要があります。また、会計時に免税対象金額を計算する必要がありますが、手動での判断は手間がかかります。

 

訪日観光客向けの集客

免税での買い物が目的の観光客向けに多言語化した販促物を店内に設置してみるのも一つの手と言えるでしょう。

英語だけでなく、多言語化も現在では必須の条件となっており、商品や店内に関する説明など、接客において外国語が必要な機会も増えることが考えられます。よくある質問の回答などは、事前に従業員と共有しておくことで対応がスムーズになるでしょう。また、訪日観光客向けにSNSで簡単なHow To動画や店舗案内動画などを作成し、アプローチするのも効率的な集客策となっている。実際に、観光地でのリサーチ動向として昨今ではネット検索ではなく、google mapやSNSでの検索が増えており、トレンドとなっている。SNS経由での来店は以前よりも増加していることから一つの策として有効だと考えられます。

 

キャッシュレス対応

海外では、日本国内に比べてクレジットカードやコード決済などのキャッシュレス決済ニーズが高く、欧米の都心部では買い物客の8割弱がキャッシュレス決済という実績もある。とあるCMではありませんが、キャッシュレス決済ができないために、買い物を断念されてしまうリスクもある。訪日外国人にスムーズに買い物をしていただくためには、キャッシュレス決済への対応も必要と言えるでしょう。

 

今後、ますます訪日観光客が増えることが予想される日本において、インバウンドによる消費増加は確実と言えるだろう。

モノ消費、コト消費の外国人による需要が増える中での、さらなる環境整備と訪日観光客へのアプローチがさらなるビジネス拡大の策となりえるではないだろうか。