歴史に残る2020年のパンデミックはファッション業界にも大きな影響を及ぼし、ファッション業界に新たな経験をもたらしました。21-22年秋冬シーズンのコレクションでは多くのデザイナーが、「#STAYHOME 」というキーワードでの最後のファッションウィークになることを祈って、ファッションがもつ高揚感や芸術性、社会的責任をインスパイアしたコレクションを提案した。その高いファッション性は、楽観的なコレクションの数々は近い将来再開するであろう新しい世界の幕開けを予感させた。

 

ブランドごとの目指す理想の姿は様々で、あるブランドでは次の冬の休暇としてスキーゲレンデを提案し、あるブランドはサステナブルファッションのその先の形を新しい形で提示。人気のフォーマルブランドでは、強くて芯のあるしなやかな女性をアイテムを通じて表現した。

 

果たして今シーズンの秋冬のファッション業界はどんな新しさを垣間見せてくれるのだろうか。

 

 

ニットの復権


 

今シーズン、久しぶりに主役に躍り出たのアイテムが「ニット」ではないだろうか。ファーやレザーに替わる防寒性の高いアウターとして、そしてリラックスムードを象徴する素材として、多くのブランドがニットアイテムを打ち出した。 今季のニットは脇役ではなく、あくまで主役。レトロなローゲージセーターやインパクトのあるポンチョ、洗練されたベーシックカラーのハイゲージニットまで、その種類はいつになく豊富だ。ニットでのセットアップコーデや、ニットをアウターの中心に持ってくるスタイルが今っぽいと言えるだろう。

 

ウィンターバケーション

 
「スキー」や「雪山」といった、北ヨーロッパの冬の保養地を創造させるスキーをキーワードにしたアイテムからは目が離せないだろう。コロナによるパンデミックをアンチテーゼ的に、多くのデザイナーが提案したのがスキールックではないだろうか。その多くが、映画『シャレード』のオードリー・ヘップバーンや『ピンク・パンサー』のクラウディア・カルディナーレを彷彿とさせる60年代風のムードをまとって登場した。ダウンジャケットやダウンブーツ、ノルディックセーター、ムートンコート、ファーブーツなど、少しレトロなカラーやデザインのアイテムをタウンユースとして着こなすのがトレンドになりそうだ。

 

時代は00年代へ

 
昨年までファッション業界のキーワードの中心は「90年代」だったが、今シーズンより時代は「00年代」へ突入した。デジタルの進歩により、情報が世界共通化され出したこの年代はファッションは、ファッションだけのカルチャーとして止まらなくなってきた。ミュージックカルチャーやゴシップ紙などからもファッションのカルチャーが発信されムーブメントとなっていった。当時のパリス・ヒルトンやブリトニー・スピアーズといった”時の人”を彷彿とさせるウエストを大胆に露出したスタイリングや、ローライズのミニスカート、キッシュなカラーリングなど・・・レトロとは一味違った時代感を感じさせる。今季はそんなノスタルジーを刺激する2000年初期に流行したスタイルが再熱。ローライズのブーツカットデニムに、少しダサいとも思えるスニーカールック。2000年代にブレイクしたLAセレブにように、反抗的で若々しいエネルギーに満ちたムードが今っぽい。

 

ボリュームトップス

 
「ダウン」や「中綿」、「キルティング」などといった、よりビッグボリュームで、よりデコラティブなアイテム達がトレンドに進化した。引きずるように着こなすロングアウターのほか、ジャケット、パンツ、ジャンプスーツ、ミニドレスとさまざまなアイテムで中綿を取り入れたアイテムが登場。独特のボリュームシルエットが生み出す、モードなニュアンスを楽しんでみてはどうだろうか。

 

オリジナルパターン

 
分かりやすく表現するところの「柄」物が今シーズンのトレンドだ。単に柄と言っても、レオパードや千鳥などではなく、今シーズンはブランドのオリジナル柄がトレンドを左右しそうだ。柄で人と差をつけてみるのが今シーズンのトレンドとなりそう。

 

 

いかがだっただろうか。目まぐるしく変化する時代の中で、それぞれの特徴を生かしながら新たなカルチャーを作り出すファッション業界こそ、新型コロナウイルスに立ち向かう唯一無二の存在なのかもしれない。ファッションの火は未だなお燃え続けている。